著者はベトナム戦争さなかのサイゴン(現在のホーチミン市)を皮切りに、ワシントン、北京で国際報道に携わってきたジャーナリスト。「解放戦線の戦士の目は澄んでいる」といった情緒的なベトナム報道が多いなかで、安易な道義論を排した「古森義久」の署名入り記事は、当時から異彩を放っていた。その報道姿勢は本書にも貫かれている。たとえば、中国人の反日感情は「日本侵略者」の残虐性を徹底して教え込む歴史教育によって作られていると古森はみるのだが、これは決して根拠のない感情論ではなく、緻密な取材と中国歴史教科書の徹底分析から得た結論なのである。
中国の青少年は、現代日本が民主主義の国であることも、日本から6兆円にのぼる援助を受けていることも教えられていない。中国共産党が日本の「侵略性」と「残虐性」だけを執拗に教えるのは、凶悪な「日本鬼子」を退治した党の歴史的偉業を宣伝することによって、「統治の正統性」を国民に認識させるためである。反日感情と党の正統性が密接不可分の因果関係にある限り、「日本の罪」は永久に許されることはない。これが中国の「正しい歴史認識」であると古森は言う。
中国史研究の第一人者、岡田英弘は著書『歴史とはなにか』で「中国文明の歴史の本質は『正統』の観念である」と言っているが、本書は見事にそれを実証している。(伊藤延司)
登録情報
|
その数日後に本書を読んで、なるほど、と思わされる箇所がいくつも出てきました。中国人がなぜあれだけ日本人を嫌うのか、歴史をネタに攻撃してくるのか、よくわかります。
しかしそれ以上に、本書で書かれている、日本の中国に対する援助の金額、その使い道、それを黙視している日本政府の態度等、我々がもっと知らなければならない事実が具体的な事例とともに記述されており、そちらを評価したいと考えます。惜しむらくはデータの典拠を巻末に列記してもらえればより説得力が増したかと思います。
1.中国当局の圧力のために、中国の偏向された記事しか書けない現実
2.反日教育は、中国国内の代理権力闘争に利用されている
3.中国共産党による中国統治の正統性確立と中国当局の公式見解の読み方
4.中国当局の意向を受けて、反日思想を埋め込む日本国内の団体の言及
などが主な部分である。
中国国内で仕事をする日本人ビジネスマンの話やビジネスの困難さが記述されている部分もあるが、中国の政治、国民性、教育、文化の多くに紙面を割いている。
2004年の中国で開催されたサッカーのアジアカップで、観衆による反日行動の経緯や背景を知るためのきっかけになる。
|
|