今回も時事ネタを扱ったものが多い(雑録ですので当然ですね)のですが、言葉の扱いの正確さと上手さが、そして物事に対する考え方の鋭さが、真摯で良いと常々思ってます。金井さんのエッセイの帯にはいつも辛辣、とか辛口エッセイとか、意地悪な、という言葉で形容されているのですが、個人的にはただ単にストレートなだけではないか?と思います。まっとうな感覚の持ち主なのではないか?と感じるだけです。
サザエさんのとある一コマから堀口大學、矢作俊彦著「悲劇週間」を経て文芸時評や文学を取り巻く世界の鈍さについて語られ(この繋ぎが最高!)たり、現代アートの話しからイスラエル、そして村上春樹のスピーチ「壁と卵」をめぐる内田樹の慌てっぷりと結局のところどこか白けるスピーチ(陳腐)を扱う周辺について、ジャーナリスト(金井さん風にするならジャーナリストの上に点をいちいち打ちたい)鳥越俊太郎(を評して「どこの地方とも知れない抜けないナマリが誠実そう、というキャラ」という文章を差し込む!上手い!)のあざとさを指摘、などなど、まっとうな意見で心地よいです。言葉を正確に操ることの重要性に襟を正したくなります。もしくは整合性というここ日本では忘れ去られ易いものの重要性を改めて認識させられます。
文学と映画について、あるいはその周辺のことについて取り上げられることが多くて面白かったです。特に大岡昇平氏と藤枝静男氏の目にまつわる話しには考えさせられる部分が多かったですし、非常に面白く、また、この話しを春日武彦先生はどう思うのか?が気になったりしました。
のりピーの覚醒剤事件についての報道からヒロポン(はギリシャ語の「楽しい+仕事」をかけた造語です)を推奨していた時代を含んだ考察は至極ごもっともですし、その報道するアナウンサーに対しての形容がもう膝を打つもので素晴らしかったです。
そして、いろいろなモノが繋がる楽しさ、とも言うべきものがあって、金井さんが矢作俊彦氏や吉行淳之介氏(の作品や人柄)に対しての言及もかなりいろいろな意味で面白かったです、矢作さんの日記の話しは笑えます。いや、本当に凄い日記ですし、編集者の酷さと、それを文章にするテクニックが素晴らしく、尚且つ金井さんの指摘も笑えて最高でした。 文章の鋭さ、という意味においては矢作さんも金井さんと似ていると思いますし、素晴らしいです。
最後の方の『「W杯日本惜敗」でも「日本中が一体感」』は笑えます。私個人ははこういう『一体感』が気持ち悪く感じます。
金井 美恵子さんの文章が好きな方にオススメ致します。