中日新聞夕刊の「今週の本棚」で紹介され、興味をもったので購入。
親の死を隠し、年金を詐取する事件が全国相次いで起きた時、かの都知事は「日本の道徳心
もここまで落ちぶれたか」と嘆いたが、江戸時代でも普通に行われていたらしい。しかも誰も
が公然と。この著作は旗本大谷木醇堂が著した『醇堂叢稿』を元にしているが、醇堂の父も祖
父の死を伏せ、3千石(なんとおよそ3千人が1年に食べる米と同量)もの禄を何年にもわた
りせしめていた。
さらには、職場のイジメ、露骨な猟官運動、現在とは桁違いの役得、変わったところでは江
戸城内のトイレ事情などの実態が、明治30年まで生きた元旗本の目を通じて語られ興味深い。
かつて神坂次郎氏が『元禄御畳奉行の日記』で、尾張藩士から見た江戸時代の様子を克明に
描いてみせたが、これはその旗本御家人版といえよう。武士=忠義・清廉潔白のイメージを思
い浮かべるが、結局のところ、いつの世でも人間=組織人は変わらない。