幕末・維新を扱う読み物は多いが、「攘夷の向う側」の思考と行動を知るには本書が最適。列国最強だった英国が「当事者」として日本をいかに扱おうとしたか、何百というエピソードを通じて鮮やかに描き出している。英国人がみた徳川慶喜や西郷のポートレートは等身大で非常に興味深い。それにしても当時は外交官個人の役割が非常に大きかったことに驚かされる。無線通信発明以前で、横浜=ロンドン間の報告・指示に往復半年かかった当時、英国公使は多くの局面で自らの判断により行動する。本書では薩英戦争を始めとした歴史が、外交官の判断と行動により次々と動いていくのを追体験できる。また、緊迫する政治の合間に綴られるサトウの旅日記も秀逸。公務の合間に日本各地を旅行した彼は、通訳から外交官そして日本学者へと成長する。広重そのままの街道を歩き尽くす彼に同行して、永遠に失われてしまった当時の風景を想像してみるのも面白い。