宮田珠己先生の処女作である。ダリがシュール・レアリズムを生み出したように、宮田珠己はシュール・ボケリズムを生み出した。その記念碑的作品である。
宮田先生の本はとても面白い。なので多くの人に読んで頂きたいが、レビューは非常に書きづらい。基本的に結論がない。だから本の趣旨をまとめるたぐいのレビューは書けない。笑える本と言えば、オイオイと突っ込みを入れながら紹介するという手もあるが、一つの文にボケを二つも三つも入れられては、突っ込む前にボケそのものをうまく紹介できない。最後の落ちも、そこに至る紆余曲折が曲がり過ぎてて何処がフリだったのかよく分からない。
「そもそも旅行の内容が余りに普通だ。」と書こうと思って、普通の人はこんなに騙されないことに気づいた。「1000ルピーも寄付するな!1ルピーで十分だ。1000ルピーあったら、おばちゃん一週間は遊んで暮らせるぞ!」とやっと突っ込む場所を見つけた。
宮田先生をバカ呼ばわりするのは不本意なので、ほぼ同義語を使って「さすが宮田先生、いつまでたっても好青年。」と誉めさせていただく。
後書きに「ふざけすぎた若気の至りを反省する」と、宮田先生の何やら不穏当な発言が見られるが、著者紹介の写真を見る限り、全然反省してなさそうでほっとする。
本書は元々が自費出版であり、つまり当時の宮田先生は素人であった。素人がネタを披露する媒体が自費出版や深夜ラジオの投稿葉書しか無かった当時、素人は狭き門を通るため、滑るのを覚悟で今より大胆な文章を書いていたと思う。もちろん宮田先生は別格ですが。
『我々は書けば載るネット社会に甘えていないか?』
この練りに練った作品を読んでそう思わないだろうか?宮田先生をこのまま絶滅危惧の天然記念物にしてはならない。誰か後を追ってくれ。
宮田先生の筋違いの情熱を受け継ぐ若者が現れることを、アラフォーの評者の老後の楽しみのために強く望む。