ある民族がどんな人たちなのかを最もよく表わしているものの一つがコトバだろう。中でも日頃から話されている話し言葉には、その人々の“今”が色濃く反映されている。
本書はお馴染み“指さし”シリーズの1冊で、旅先で使うことを意図して作られている。チベット語(だけではないが)は比較的発音の厄介な言語で、カタカナ表記を読んだところで、まず通じない。文字で書いたほうが相手にも親切かもしれない。
著者のひとり星泉(ほし・いずみ)氏は東京外大のチベット語の専門家。しかも、お母さん(星美千代氏)の代からの関わりで、生まれた時にはすでにチベット語に囲まれて生活していたというから、内容に間違いはないだろう。
楽しいのは本書で取り上げられている会話のサンプルだ。チベット文化に長時間触れたことがないと表現できないような内容を、しかもどっぷりアチラ側に浸かるのではなく、ちゃんと旅人の視線でとらえて表現している。
チベットに行く人にはもちろんお勧めだが、なまじっかな堅苦しいチベット関連本や、よくあるもったいぶった紀行本の類よりも、ホンモノのチベット文化に触れられる入門本としてもお勧めできる。