はっきりいって、私にはすばらしいエセーの哲学だと感じられた。何を試みているかといえば、旅の試論なのである。哲学と人が聞くと、なにやらお堅い専門用語が出てくるもんだと思いがちだが、そんなものばかりが哲学ではない。旅を哲学することが、自分の旅の経験や人の旅についての経験から思索することから出発するものであり、同時にそれは自他の直接間接経験が絡み合って抜き差しならぬものになってしまうことを、著者は意図的に構築してゆく。旅の文体とは文体の旅でもあり、われわれが訪れる処女地の経験も、何らかの既知によって解体にさらされているのである。そうしたときにあなたは本当に自分だけの旅といえるものを敢行できるのだろうか。旅を哲学することはどういうことなのか、この本を読んでじっくり観想を巡らせて旅するといいだろう。