初期の作品と比べるとアイテム数が断然豊富で日本の経済的繁栄を如実に映していると思いました。
核戦争を生き延びるための方舟という舞台設定も時代を映しているのですが、船長の切実さは作品全体をおおうところまでいっておらず、どこか子供の遊戯めいた雰囲気の中物語が進行します。
侵入者のせいで夢、希望、計画がけっきょくはかなく裏切られ頓挫してしまうというのは安部公房のいつものパターン。数々の短編と「飢餓同盟」を連想しました。ただ方舟の目的自体が現実的であると同時に非現実感を伴なうものであるせいか、物語の結末は明確な絶望までには至っていません。希望を裏切る現実そのものが生気を失っていて半透明であるところが安部公房の新境地だった気がします。