現代語訳と原文のあいだに挟まれる解説が完全に蛇足。
鴨長明の俗世を離れた生活のなかにある心の迷いや都市的な部分を
きちんと相対化して現代的な視座を提示しようという目論見だろうが、
実感としてまったく説得力がなかった。
一番の理由としては自然との交歓があまりにも客体化されて語られている事が挙げられる。
原文に、
「住まずして、誰かさとらん(実際そこに住んでみないで、だれが安心の境地を理解できよう、
できるわけがない)」
とあるように、究極的には本人にしか解らない感覚を
「また長明の自画自賛が始まった。」
などと大上段から切って捨てる物言いには非常に違和感が残った。
他人事ながら編者は自然と戯れ心の底から風雅を感じたことはないのだろうかと心配になる。
解説はあくまでデータ的な部分のみにとどめ、
解釈はもう少し読者に開いても良かったのではないだろうか。