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俗世を離れ、悟りをひらいたようで、どこか突き抜けきれていない人間長明。それは、たまに都に降りていっては、自分の着衣のみすぼらしさを嘆くくだりなどに、ありありと顕れてしまっています。それなりに良家の出でありながら、偏屈な性格、権力闘争によって、希望の官職が得られなかったようです。そんなことも関係してか、長明の、あまりに人間的な、その揺れる心情がわりとストレートに描かれていて、どこかどうしようもなく共感してしまいます。仏教的思想は、欲望の追求こそが社会の原動力と考える欧米的な思想の対極にあるようで、どこか同じコインの表裏なのではないでしょうか? そんなことを考えさせられました。
わたしは中高生のころ、何より古文が嫌いでしたが、こうして歳を経てから読み直してみると、教えかた、つまり教育のありかたに問題があったのではないかと思います。特に偉大でもなければ、我々と興味や関心ごとがさほど違うとも思えない人が、千年もの時空を超えて、語りかけてくるのが、古典を読むことの醍醐味ではないでしょうか? その不思議に身をひたして、思いを好きな方向に馳せのばすことが、若いころになぜできなかったのか、などと考えてしまいました。短いので、若い人にはもちろん、古文なんて二度と読みたくない、という人にも、だまされたと思って手に取ってみたら、と勧めたくなる一冊です。
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