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方丈記私記 (ちくま文庫)
 
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方丈記私記 (ちくま文庫) [文庫]

堀田 善衛
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

1945年3月、東京大空襲のただなかにあって、著者は「方丈記」を痛切に再発見した。無常感という舌に甘い言葉とともに想起されがちな鴨長明像はくずれ去り、言語に絶する大乱世を、酷薄なまでにリアリスティックに見すえて生きぬいた一人の男が見えてくる。著者自身の戦中体験を長明のそれに重ね、「方丈記」の世界をあざやかに浮彫りにするとともに、今日なお私たちをその深部で把えて放さぬ伝統主義的日本文化を鋭く批判する名著。毎日出版文化賞受賞。

登録情報

  • 文庫: 265ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (1988/09)
  • ISBN-10: 4480022635
  • ISBN-13: 978-4480022639
  • 発売日: 1988/09
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 0.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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35 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
古典をどう読むか?著者も言われる様に、日本の古典とは、例えば高校で古典文学の授業で読まされる物には、その真の読み方を知らず、唯だ、試験の為に相も変らぬ、文法や古語の記憶に終始し、古典の持つ真の迫力を知る事無く終わってしまう。こんな無味乾燥な授業しか体験の無い生徒は、方丈記と言っても、やれ、「行く川の流れは絶えずしてもとの水にあらず、淀みに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて・・」伝々で、現在とは関係の無い記録として通過してしまうのが常であろう。

だが、しかし本気で読んで見たまえ、何と緊迫感にあふれた文章であろうか!彼の描く様々の災害・飢饉・大風・大水・などは、彼の若い頃に見た記憶であるが、何十年も前の情景を、実にリアルに、リアリステックに描き出す文章は、只者ではない。京の町が炎で灰燼に帰す、合流火災の凄まじさは、東京下町を焼き払ったアメリカ軍の無差別爆撃の恐怖と、重なるものを思い起こさせるだろう。鴨長明は音楽、特に琵琶の名手であったという。文章の素晴しさは、彼の美的感受性の反映であろうし、この大いなる過酷な事態は、トテモ、はるか遠い時代の事とは思えぬのである。いつか我々に襲い掛かる災害が、この長明の描く世界とそっくりの地獄を作り出す事は、大いに有ると思ったほうがいい。人間は、そこで果たして、如何なる振る舞いを為すのであろうか?

堀田善衛氏のこの本「方丈記私記」は、古典である「方丈記」を「同時代」の事として読むことを教えている!「同時代」として読んだ時にこそ、この本の本当に恐るべき真価が理解される。堀田氏は、方丈記を敗戦間近の東京大空襲の記憶と重ね合わせた、同時代ドキュメントとして読み、当時の鴨長明氏の心境まで髣髴とさせる程の、素晴しいものとされている。おそらく、このような事態は、仮に、東京大震災、東海大地震、などが、起こった際には、当時と同じ地獄絵図として、繰り返されるに相違ない。

有名で有りながら、真髄が多くの人々に知られる事の無かったこの古典を、画期的に解釈する「方丈記私記」は「方丈記」と共に、高校生に是非読んでほしい本なのです!それは、惹いては堀田善衛という、極めて個性的で、類稀な、良質な作家を知る機会にも成ると思うからです。
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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
私的な解説書 2009/11/16
By 山寺
形式:文庫
私がこの本を買ったのは、堀田善衛さんが、方丈記の終わり近くにある、「汝、姿は聖にて、心は濁りに染めり。栖は、即ち、浄名居士の跡を汚せりといへども、保つところは、僅かに、周梨般特が行いにだに及ばず。」をどう感じたかを知りたいためであった。予想に反してこの鴨長明の言葉には、ほとんど紙数が割かれていない。ただ、「最後の拠りどころである筈の仏教までが蹴飛ばされてしまった」とだけ堀田さんは書いている。鴨長明は自分の未熟さを言ってたのだと思うが、堀田さんはそれを、仏教の限界、あるいは仏教を修行して何とかなろうという人の限界ととらえているのだろう。さらに、堀田さんにとって隠者がちっとも悟ってなんかいないのもわかりきったことなのかもしれない。
ということで、私にとっては、少々意外な本だったが、鴨長明と藤原定家の歌に関する解説は面白かった。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
普通の人と同じく方丈記の冒頭の文「ゆく河の流れは絶えずして、〜久しくとどまりたる例なし」しか知らなかったが、堀田善衛氏の「方丈記私記」を通して方丈記の他の部分がどういう内容であったかをはじめて知った。著者堀田氏は東京大空襲の中を逃げ惑うという経験をしているが其の中から方丈記の一節を思い出している。「火の光に映じて、あまねく紅なる中に、風に堪えず、吹ききられたる焔、飛ぶが如くして一二町を越えつつ移り行く。其の中の人、現し心あらむや。或るは煙に咽び倒れ伏し、或るは焔にまぐれてたちまちに死す」とある。京都の大火に関する描写が東京大空襲をそのまま表現しているかのように的確で臨場感にあふれ、真にせまる表現であることに驚いている。方丈記では安元3年の大火、福原遷都、治承4年の大風、養和の大飢饉、元暦2年の大地震、等を扱っており、どの文章も素晴らしく、800年後の今日においても生き生きとしていることを発見して感動した経緯が書かれている。多くの例をあげて方丈記の文章が力強く、名文であるかを教えてくれる。其の過程で方丈記の作者鴨の長明の人物像とその生涯が詳しく紹介されて、余すところがない。単に仏教思想の無常観をあらわしたものと思っていたが実際は6個の事件に関するルポルタージュの文章という趣があり、全く予想外であった。方丈記の真の読み方を教えてくれた堀田善衛氏に感謝したい。毎日出版文化賞を受賞した名著と言える。裏切られることのないことを保障する。
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