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21 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
もはや石川淳の作品。,
By 遠遊 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 新釈雨月物語;新釈春雨物語 (ちくま文庫) (文庫)
名訳である。本書が凡百の現代語訳と一線を画するのは、その訳文にちりばめられた夷斎石川淳先生のエッセンスに由来する。先生一流の名文は物語を飲み込み、「現代語訳」であるといった違和を感じさせず、あたかも雨月物語を己の作品としたかのような風情である。しかし、そうは言っても、かなりアクの強い訳であることは事実であり、先生が不要と感じた表現は一切これを切り捨てて惜しまない。よって、原典の細部まで忠実に訳したものを所望する読者には、本書をお薦めすることは出来ない。
19 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
時代を超えて読み継がれるべき傑作,
By のいのい (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 新釈雨月物語;新釈春雨物語 (ちくま文庫) (文庫)
上田秋成の文学として最もよく読まれるのはやはり「雨月物語」でしょう。
これはとにかくすごいです。 まず最初の「白峯」の書き出しに圧倒されます。 読者を一気に物語に引きずり込む運動感のある文体、巧みな文章構成と緻密な言葉の配置、西行と上皇とのテンポの良い掛け合い。 どこにも隙がありません。 その後も、死して霊となってまで再会の約束を果たす男を描いた「菊花の約」や、人間の羈絆を脱して鯉に化した僧の眼にうつる絶美の自然をえがく「夢応の鯉魚」など、有名作品がずらりと並びます。 どれをとっても、完璧なまでの仕上がりで、全く文句の付けようのない奇跡のような短編集です。 江戸時代にあって、前衛的な短編集をこれほど完璧な形で表現し切った上田秋成に対し、私たちは完全に言葉を失います。 ところが、です。 その一方で「春雨物語」に目を転じると、なんとも状況ががらりと一変してしまうのです。 まず「血かたびら」「天津をとめ」と歴史的なエピソードを淡々と書き連ねる短編が並びますが、どちらも浅く軽い。 紀貫之と海賊との歌論の掛け合いを描いた「海賊」も、よくできてはいますが「雨月物語」で見られたような精密な構成美はもはや存在しません。 なぜ上田秋成文学はこれほどまでに変わってしまったのでしょうか。 そのことを理解するためには、上田秋成自身が変化の中に一生を送ったことに目を向けねばなりません。 彼は若い頃は放蕩生活、その後俳諧の世界に入り、商売を家業とした後に医者になり、次第に短編を執筆しつつ、一方で歌も詠み国学も修めた、そんな人なのです。 そして文学作品そのものも、茶の本から戯文、怪異譚に随筆まで、ありとあらゆるジャンルに挑戦しています。 つまり、「春雨物語」における文体や文章構成の大きな変化は、新しい文学(一種の散文ですね)を開拓するための必然的な変化だったということなのでしょう。 本書を通して「雨月物語」「春雨物語」の2編を読むことにより、私たちは上田秋成の底の深さをこそ感じるべきなのかもしれません。 さて、話はそれだけでは終わりません。 実はここからが本題だと言ってもよいでしょう。 「春雨物語」の最後に収録された「樊(上・下)」を読むに至り、読者は確実に再度この上田秋成文学に圧倒されることとなります。 「春雨物語」という散文形式による新しい挑戦が、なんとここで完全に完璧な形で完成されているのです。 つまり、上田秋成が「春雨物語」によって試みた散文形式による小説の終着点が、その最後の作品においてすでにくっきりと示されているわけなのです。 「雨月物語」に対して相対的に存在感の薄かった「春雨物語」が、最後に「樊(上・下)」を配することにより、ぐっとその重みを増す。 二大物語としての両輪がしっかりと地を捉え、文学が美しく立ち上がる瞬間を、ぜひ感じてみてください。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「座右の書」としたい本,
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レビュー対象商品: 新釈雨月物語;新釈春雨物語 (ちくま文庫) (文庫)
どうしてこんなに「雨月物語」に惹かれるのか?
その答が、巻末に載せられた「雨月物語について」と言う三島由紀夫の文章にあると思います。 とにかく、その美しい文章と、それが描き出す「美」、そしてその裏にある反抗精神に魅せられるのでしょう。 傑作「白峯」の冒頭の美しさは何とも言えません。 その美しい文章が、リズムを刻むように流れてゆきます。 三島の指摘を待たずとも、「夢応の鯉魚」の琵琶湖を泳ぐ魚の目からの風景を表す文章の見事さは、完璧としか言いようがありません。 もちろん、現代語への訳者石川淳の文章力も、流石としか言いようがありませんが・・・。 とにかく、三島ではないですが、「座右の書」として何度も読み返したい本です。
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