「四谷怪談」に関してはある程度の知識があってこの本を読んでみた者ですが、論拠の薄い思い付き的論考にしか思えませんでした。
主要研究者の説などもある程度紹介してはいますが、はっきりとした理由も書かずに自分はこっちの説に賛成、といった調子。お岩貞女説を採る理由は?田宮神社の宮司さんと親しく話したから?(神社は立場上この説を採るしかないというのは、有名な話です)
お岩稲荷が下級御家人の女房たちに信仰されてたって証拠は?幕末・明治以降、花柳界の女性に人気があった(縁切りのご利益で)という話なら聞いたことがあるけど…。
新しい見解としてこのような説を主張するなら、その裏付けとなる資料や証拠を(簡単でもいいから)挙げてほしい。この程度の内容に「新釈」などという大げさなタイトルはどうかと思います。
南北の芝居を丁寧にたどる入門書だったら、同じく最近出た塩見鮮一郎氏の「四谷怪談地誌」のほうがずっと良質でお勧めです。