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新選組の幹部隊士はじめ親しみを抱いた人々との心温まる触れあいの中にも、随所へ挿入される「敵」との哀しい関わりあいが対照的で、明暗繰り返される展開のコントラストが面白い構成です。
数えきれない苦しみや侘しさを通過して来たからこそ、爽やかな笑顔の奥に凛とした強さを併せ持っていた青年・平助が、土方歳三と出会い、彼に惹かれて新選組に身を投じ、過酷な日々に身も心も苛まれて遣り場のない茫洋とした寂寥感を味わい続けるうち、徐々に変貌していく姿を無理のない流れに乗せて巧く描き出した??ころに、この作品全体の旨味を感じます。
橘の香りが象徴する土方歳三との衝撃的かつ運命的な出会いや、清河八郎との関わりに加え、桂小五郎や坂本龍馬との奇縁など、独創的なエピソードも多々ありますが、これも現存史料の語る像ではあまりに不透明な「藤堂平助」という一人の青年の心情に、より深くきりこむ為のひとつの手段なのでしょう。
試衛館以来の新選組幹部隊士の中では最も凄惨な最期を遂げた彼が、終盤で度々胸に刻む「裏切り者」の責め苦は、本作の前身「SAMURAI 裏切り者」の表題でもあり、彼の中で非常に重く自虐的に繰り返される言葉ですが、彼を慕う作中の誰もがそうは呼ばないにも関わらず、その言葉によってどんどん自分を追い込んでゆく平助の姿は痛々しいです。
そんな痛みの中でラストに香る橘が無言に告げるのは「裏切り者」が精一杯「裏切り者」の意地を通した、死してなお変わらぬまっすぐな想い。
切なさとほの温かを同時に残し、藤堂平助の体温を感じる作品です。
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