見たくないもの、認識したくないものから逃げ続けた挙句、追い詰められ、現実に向き直って初めて道が開ける・・・読み通してみるとそんな感じの物語だった。現実に向き直った登場人物たちは、それなりの決着を迎え、最後まで逃げ続けたフルイチなどは悲惨な末路を迎えている。キャラクターは全体的に渋く魅力的に描かれている。特に主人公の父親の渋さ、母親の「いい女」っぷりは目立って良く、中佐の母親も「壊れている」のだが、何とも魅力的な壊れ方。彼女が、中佐の所へやって来る事になる降りは良かった。
アニメでは今一つはっきりと判らなかったヒルケン皇帝についてもきちんと描いてくれていたし、中佐のハルへの一見好意的とも想える態度はハルに対するブラフかと想っていたら本気だったのか!と言った部分など、矢張りこの作品は映像で見るものではなく文章で読むものだったのだなと感じさせられた。
兎に角、この作品、アニメと切り離して独立した長編小説として読むべきだろう。このままSF小説として早川書房へ持ち込んだとしてもソフトカバー単行本のJシリーズに加えて貰えた気がする。
それにしても、よくこれだけのものを描ききったものと想う。
上巻もそれなりのボリュームだったが下巻は更に厚い。全体を通して普通のラノベの文庫にしたら四冊か五冊くらいになるだろう。著者は元々作家志望だったと言うが、今度はアニメから離れ完全オリジナルの小説を読んでみたい。