一晩で読みました。児童書並みに大きな活字でルビさえ振ってありますが、フィッシャー=ディースカウの『シューベルトの歌曲をたどって』くらいの厚さはある単行本です。
カエサルの『ガリア戦記』には、戦争の推移が淡々と書かれているだけで、血が噴き出したとか、切断した両手を積み上げたとか、震え上がったとか、そういった「感情的な」記述はほとんどありません。「見せしめに全員の両手を切断した」。それだけです。でも、そんなに大勢の人間の両手を切断したら、地面は血の海になるだろうし、切断される前に捕らえられた人は非常におびえ、実際に切断されたら物凄い叫び声を上げるでしょう。でも、そういうことは、書いていないし、あたりが血の臭いでいっぱいになった、というような説明は出現しません。これは、解説によるとカエサルが本国ローマでの自分の地位を有利にするために書いた書物なので、そういう描写は目的に沿わなかったでしょう。キケロが名文として絶賛し、ローマ市民がこぞって読んだ『ガリア戦記』を日本語で読む喜びを与えてくれた新訳に感謝します。訳文は中学生でも読めるような平易さ、本編開始前にわかりやすい状況説明、本編中に見やすい注が付けられ、誰でもシーザーのフランス遠征の時代にタイムスリップできます。昔読んだ岩波文庫より、ずっとわかりやすく、興奮しました。