大学の授業で紹介されたのを機に興味を抱き、手に取った本です。読んだのは岩波版ではありませんが、内容は全く同じなので、ここに書き込むことにします。この本の内容は、東学党の乱から日清戦争終結・三国干渉の間の外交を陸奥宗光の視点から描いた、半自伝的外交録です。
記述面においては、陸奥自身による己の外交政策の弁明と見られる部分もあるものの、全体としてみれば極めてリアリスティックな描き方がなされています。当時の外交を帝国主義的と単純に切ってしまう事は簡単ですが、どの時代においても国を動かす責任を負った人々が、懸命に時代に立ち向かっていった事は紛れも無い事実です。この本を読むことで、外交がいかに戦略的であり、運にも左右されるかと言う事が理解できると同時に、現代日本の外交やそのプロセスに対するマス・メディアの批判が如何に的をはずしているかがわかってきます。
また、近代日本の政策を帝国主義・侵略主義と割り切ってしまう自虐史観がある一方で、近代日本は常に欧米列強からの圧迫を受けてきたものであり、欧米列強こそが一番悪いのだとする自国中心主義史観がありますが、歴史はこのどちらかの視点で把握しきれるほどに単純なものでは無いということもわかります。領事裁判権について述べている一章を読むと、当時の西欧列強は単にアジア侵略に固執していたわけではなく、彼ら自身に一つの文明観があり、それをもとに行動していた事が実感できます。もちろん、それは一面で歪んでいた事は否めませんが、文明化の義務といったものを背負っていた事も事実です。この構図は、現代の国際政治の先進諸国と行進国においても当てはまると思います。このように当時の外交を現代の国際政策理解の一助にできるのも、この本の大きな魅力でしょう。