著者のユニークさは本書のタイトルにも表れている。タイトルの「新規事業がうまくいかない理由」はネガティブな表現である。失敗しようとして起業を検討している人はいない。新規事業を企画する部署の人が、部署の予算で本書を購入しようとしたら、「失敗したことを考えてどうする」と叱責されそうである。現に起業に問題を抱えている人も、うまくいっていない理由を考えるよりも、何とかして軌道に乗せたいと考える筈である。それ故に「新規事業を成功させる方法」とでもした方が多くの読者を狙えるのではないかと考えてしまう。
本書の副題は「「プロ」が教える成功法則」、帯には「失敗率90%の崖っぷちから御社を救う、最強の知恵」とあり、起業を成功させるためのノウハウがあることをアピールしている。本書の内容も新規事業の失敗と同じくらいの分量で、新規事業を成功させるための指針や成功した新規ビジネスの実例について記述する。
このため、本書の性格上、「新規事業を成功させる方法」というタイトルにしても不思議はない。しかし本書は、あえて「新規事業がうまくいかない理由」とネガティブな表現をとった。そこには意外性ある書名で惹き付ける効果を狙っただけでなく、新規事業がうまくいっていないという問題の直視すらできなければ改善もないという冷厳な事実を突きつけられているように感じられる。
問題点を内省せず、ひたすら成功するための方法を追求するだけの前に進むことしか考えないタイプでは、タイトルだけで本書を忌避してしまうだろう。その意味で本書は読者を選別する書籍とも言えそうである。本書が日本社会に受け入れられるか否かによって日本の企業内起業家の成熟度を測ることができるようにも思われる。