デビュー作に続いて刊行された第二作。定番と言える雪に閉ざされた別荘が舞台。あまりに不可解で意図が皆無な逆さ吊り死体の謎や、
目的に作為が感じられない毒殺の謎、人間技では為し得ないほど超人的な死体移動方法の謎等、てんこ盛りだ。
ただ、前作でぶちかました独創的なトリック性には欠けるかもしれない。ただメイントリックの有無だけが歌野の魅力ではなく、処女作
から萌芽としてあり一貫して彼の作品に存在する構成自体で読者を欺く仕掛けには油断なりません。なかなか巧い。本書も質感が変わり
時間が止まる瞬間があるね。より顕著なのは次作だけど。
その観点からみれば歌野は先鋭的な作風の持ち主でもあるが、一方でどうしようもなく懐古的な概念の持ち主でもある。本書では事件の
背景となる動機なんかにそれが出てる。どこまでも簡潔にして、どこまでもおどろおどろしい。この二面性が特徴だ。
また二面性といえば、事件を解決する探偵役の信濃。彼の方程式やスタンスは独特。事件に興味があって興味がないのだ。不可能を可能
に演出してみせる一方で、一番重大な事件の抱える闇については飄々と受け流してしまう。そんな彼の魅力が一番出ているのが本書かも
しれない。
信濃が説く血で血を洗うことの無意味さ。その単純な図式こそ何よりのパズルだという感想を抱く一品だ。