実は、本のタイトルはずっと昔から知ってたんですけどね。最近になってこの作品誕生のきっかけになったお話というのをWebで見かけて、そういえばと思い立って読んでみました。日本人作家のミステリーって読まないほうなんですが、これは面白かった。読みやすく一気読みができる作品です。ちょっと2時間ドラマっぽい感じでしょうか。浜岡原発で働いていた人が、高度な放射線を浴びる建屋内に入ったとき、防護服を通じて蟹の足音のような耳鳴りがしたとか、その後も耳鳴りが鳴り止まずノイローゼになってしまったとか、その話をきっかけにこの話の作者の長井氏は取材を重ね、本作を書いたとか。ご本人に聞いたわけではないので真偽はわからないけれど、いまでもずさんな原発内の安全管理が時々表ざたになるくらいですから30年以上も前の原発ではいったい何が行われていたことか・・・。しかし、誤解のないように申し上げておきたいのは、この作品は反原発の意図とか批判がましいところはほとんどありません。殺人事件ミステリーの路線を外れない、その意味では身構えずに読める作品かと思います。
とにかく30年前に書かれたとは思えない、違和感のない出来です。もちろん、インターネットとかケータイ電話みたいなアイテムは出てきませんが決して物足りなさはありません。
おススメの一冊です。