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新自由主義の復権 - 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書)
 
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新自由主義の復権 - 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書) [新書]

八代 尚宏
5つ星のうち 2.8  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

格差問題や金融危機を生んだ思想とされ、評判の悪い「新自由主義」。その誤解をとき、市場の活用による日本経済再生への道筋を描く。

内容(「BOOK」データベースより)

「市場競争を煽って格差を拡大し、日本の伝統を破壊した」「世界金融危機を引き起こした元凶」―現在の日本において、新自由主義ほど批判される経済思想はない。だが、その見方は本当に正しいのだろうか。本書では、「小泉改革」や世界金融危機の再検討、さらに日本経済史を通じて、その誤解をとく。そのうえで、新自由主義の思想に基づき、社会保障改革から震災復興まで、日本経済再生のビジョンを示す。

登録情報

  • 新書: 254ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2011/8/25)
  • ISBN-10: 4121021231
  • ISBN-13: 978-4121021236
  • 発売日: 2011/8/25
  • 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 2.8  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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著者は経済財政諮問会議議員を初め多くの要職に就き、政策を立案実行してきた、経済政策の第一人者である。著者の経済思想は典型的ないわゆる新古典派経済学で、本書もそれを基軸に議論が進められている。日本ではいまだに規制があるため既得権益が存在する分野が数多くあり、もっと市場を活用すべきであり、それこそが効率化、格差是正につながると著者は説く。そこで市場を活かすことと自由放任は全く異なることを著者は再三強調している。数ある提言の中でも介護・保育市場や医療分野に関しての意見は尤もと思われる。また負の所得税の導入なども検討に値する。また金融市場における経済主体のインセンティブの重要性などもさりげなく指摘されている。
日本では未だ市場経済の思想が根付いておらず、昨今の金融危機以来市場経済や資本主義を否定する言説が流行する中で、本書は貴重な一冊といえ、是非多くの人に読んでもらいたい。また中谷巌氏など市場経済を標榜していたにも関わらず、金融危機以来方針転換した人も数多い中、新古典派の市場経済を一貫して主張し続ける筋の通った八代氏の姿勢も読んでいて気持ち良い。
ただ気になった点も結構ある。
タイトルの『新自由主義の復権』だが、新自由主義という概念は政治的なイデオロギーなども関係があり、本書のタイトルとして使う言葉としてはイマイチ不適切な気がする(著者は本の中で定義を試みているが、これがどう自由という概念と結び付くかなど曖昧ではっきりとしない)。評者は『市場経済の復権』などにした方がしっくりくる気がする。また新自由主義と対立する概念として「賢人政治」と「共同体重視」が挙げられているが、これらが本当に対立する概念なのか(少なくとも評者は)よくわからない。なおミルトン・フリードマンが唱えているのはリバタリアニズムであり、新自由主義との関係などは本書では触れられていないし、評者もよく知らない(不勉強で申し訳ないです)。
次にミルトン・フリードマンの「投機は価格を安定させる」という命題だが、これは古くはケインズの美人投票を初め、ゲーム理論による精緻化を経て、昨今ではあまり妥当な意見として考えられていない。このように新古典派経済学の限界といった側面があまり記述されていない。
また新書という紙面の関係からか、ロジックが飛躍するところも散見された(特に小泉政権の評価のあたり)。
また「ケインズ政策は指導者が賢人でなければ成り立たない」という記述があるが(本書p.25)、これは全く意味がわからない。そもそもここでの指導者、賢人とは政府のことであろうか。経済理論を政治学のような発想で批判しているため議論がかみ合っていないように思える。ケインズ政策が成立しないことが多々あるのは、端的に言うと、初期のケインズ経済学は期待を含めた動学的な視点が抜け落ちているからであり(いわゆるルーカス批判)、今日では期待を含めたケインジアンモデル(むしろDSGEというべきか)が開発されており、少なくとも政府の裁量的政策を全否定するような傾向はない。
最後に「市場主義は日本の伝統」なる章があるが、ここは蛇足ではないだろうか。「織田信長が生き続けていれば英国のような海洋国家をつくった」という主旨の文があるが、合理的な議論をする八代氏にしてはあまりに乱暴な意見で少々驚いた(最も歴史の専門家ではないから愛嬌として受け取ることもできる)。
これらの不満から星三つと少々辛口だが、新書ということもあり読者層や紙面の関係から著者はわかり易く説明したということもあるだろう。いずれにせよ市場経済の重要性、そして高質の市場を創ることがいかに難しいかを再認識する上で是非多くの人に読んでもらいたい本。余談だが、本書はミルトン・フリードマンの著作『資本主義と自由』のオマージュのような印象を受けた。
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55 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By つくしん坊 トップ500レビュアー
構造改革派の「化石」ともいうべき人物が、今頃なぜこんな本を書くのか不思議だったが、本書を読んですぐ理由が分かった。TPP推進の協賛が本書の目的である。自ら応援を買って出たか、財界筋からの要望なのだろう。しかし案の定、本書の内容は、近年の日本経済についての「こじつけ」と「言い訳」のオンパレードである。

新自由主義経済学者共通の特徴は、ミクロ分析からの結論をすぐ一般化すること、自分に都合のよい指標だけ利用しそれ以外には無いことにすること(こじつけ)、自分に都合に悪い現象に対しては「構造改革が不十分だから」と言い訳して逃げること、などである。彼らの致命的な欠陥は、社会経済という複雑系に対する全体観を持たないこと、歴史に学ばないこと、強欲資本主義に対する理解はあっても弱者に対する思いやりに欠けることである。

一例だけ挙げよう。著者は労働経済の「専門家」であり、小泉構造改革において派遣労働自由化の旗振り役を果たした。その結果は、周知のようにリーマンショック後の大量の派遣切りや経済格差の拡大となった。著者の「こじつけ」は、「派遣労働の自由化は、小泉政権以前から始まっているので小泉政権の責任ではない」や「経済格差の拡大には根拠が無い」。一方「言い訳」は、「セーフティネットがしっかりしていればこうはならなかった」。労働経済の「専門家」が、このような悲惨な結果も予測できず、政策提言できないのでは、「専門家」失格である。

また、新自由主義経済学者の本を読んでいつも思うのだが、新自由主義経済学の「本家」アメリカの現状をどう考えるかについての言及が全くない。人口の1%が社会の大部分の富を占有して凄まじい経済格差を生み出し、エネルギーや資源を浪費して地球環境を脅かし、先進国中ダントツの医療費を使いながら平均寿命が先進国中最低で、しかも5000万人近くの無保険者がいる国、アメリカ。著者の主張の先にあるのはこのような国だろうか?もし、そうでないというなら、是非次回はアメリカを対象にして、新自由主義経済論をぶち上げて頂きたい。

本書は、経済学部の学生にとって良い練習問題となる。「本書を読み、著者の考え方に対して、実証データを用いて具体的に反論せよ。10例以上反論できたものを合格とする」。ほとんどの学生が合格できることだろう。
このレビューは参考になりましたか?
22 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
良書である 2011/11/3
Amazonが確認した購入
これは時期を得た良書であると思う。
サブプライムローンショックに続くリーマンショックの生起と、そしてわが国では小泉政権の退場のあと「新自由主義」という言葉自体がマイナスのイメージ一色を塗られて語られるようになってしまった。
さらにそれに追い打ちを掛けたのが政権交代による民主党政権の誕生だったが、今やその民主党政権に対する失望感が深まるにつれ、そもそもあれほどの国民的熱狂に包まれていた小泉改革と、そしてそれを支えた政治思想、経済思想としての「新自由主義」とは、そもそもどんなものであったのかを静かに考えてみるべき段階に至っていると思う。今問題になっているTPP問題や税と社会福祉の一体改革の問題も、そのような思索の上に立ってこそ適切な結論が得られるものであろう。

本書はそのような観点に立っての思索に格好の手掛かりを与えてくれる良書である。

書かれていることの理論面については、すでにどこかで論じ尽くされてきたことばかりだが、理論を支えるために挙げられている実社会の例には興味あるものがいくつかある。例えば;

社会福祉のコスト負担に関する議論では、よく「高福祉高負担の国」の例としてスエーデンが挙げられるが、スエーデンでは個人の福祉は手厚く守られているが、企業に関しては大小を問わず徹底した市場原理に晒す自由主義政策が貫かれていること。

小泉改革の行き過ぎの弊害の例として挙げられるタクシー業界の規制緩和後の混乱の原因は、タクシー操業の自由化だけが行われ、料金の自由化がなされなかったという「改革の不十分さ」こそが元凶であること。

社会保障は本来所得格差を是正することを目的とするべきものであるにもかかわらず、日本の社会保障は年金や医療などの社会保険への比重が高く最低生活保障への比重が低いために、財政的に重い負担になっているにも拘わらず、OECD諸国の中では韓国・米国に次いで最も所得格差是正効果が低い制度の国にとどまっていること、等などが次々と例証されている。

他のレビュアーの方が資本主義論を論じるのに信長の「楽市・楽座」や平清盛の宋交易を持ち出すのはおかしいと言っておられるが、本書は歴史書ではなく、話を分かりやすく噛み砕くための参考例として持ち出しただけだから、それの正否をとがめても仕方がないだろう。

ただし新自由主義経済からは、心情的には社会的公正さを欠くと感じられる富の過剰な偏在現象に対する是正のメニューは、やはり生まれてこない。ウオール街のデモに端を発してあっという間に全世界に広がってしまった、社会の1%の者だけが裕福になり99%が取り残されることへの不満はどうしたら緩和できるかについても考察しなくてはならないことを、新自由主義者たちも認識すべきだが、そのことに対する記述がないのは残念である。
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