イエスの生涯を扱った伝記作品はたくさんあるけど、そのほとんどは、4つある福音書、民間伝承、学者の考察、話を面白くするための創作、といったものを、ごちゃ混ぜにしている。しかし、この映画は、あくまで『ヨハネの福音書』のみを扱っています。
従ってこの映画を見終えれば、ヨハネの福音書についての、正しい知識が身に付きます。気軽に教養を得られる、お得な作品です。
裏ジャケに、『キリストの生涯を忠実に描いた、歴史巨編』とあります。しかしヨハネの福音書は、4つの福音書の中で最も書かれた年代が遅く(イエスの死後、半世紀以上たってから書かれた)、また内容も筆者自身の個人的で特殊な宗教思想を述べたものであるため(使途ヨハネが書いたという伝承は、学者には支持されていない。筆者が誰なのかは、今となっては知りようもない)、歴史上の実在のイエスを知る手がかりとしては役に立たないとされています。従って、この作品は、厳密には歴史映画とは言えないかもしれません。
しかしヨハネの福音書が、90年代にキリスト教徒の手によって書かれたのは事実であり、ローマ帝国の迫害とユダヤ教との対立の中で、イエスの教えが変質してしったこと。また、信者の中でのイエス観も、実在した人間イエスから、『神の子』へと変わって行ったことが、汲み取れます。年表に記されることだけが歴史ではないのです。
この作品でのイエスは、非常にカリスマ的でカッコイイ(これはイエス役の人が美形なのもあるのですが)。そしてイエスの神秘性を、強く強調する内容になっています。
福音書筆者の、『イエスは神の子であり、救い主である』という信仰を伝えたいという想いが、ひしひしと感じられます。