1997年に出版されてベストセラーとなった『
論理トレーニング』の改訂新版。30ページほど増えているが,内容はむしろ整理され,解説が充実している。
論理トレーニングといっても,たとえば小野田博一『
史上最強の論理パズル』のような論理パズルの類ではない。そのような要素も少しはあるが(第9章),本書は「考える」ことに焦点を当てたものではなく,むしろ考えたことを的確に表現することを目指したものである。
本書は,大学での授業をもとにして書かれたものだ。だから,レベル的には,大学生・社会人が対象である。高校生や中学生が試しに読んでみるのも悪くはないが,完全独習は,たぶん大変だ。まあ,そんなに慌てなくてもいいだろう。しかし,学校や塾の先生が,現代文や小論文の指導のために読むのは,有益だと思う。
本書の構成は,著者が以前に出した『論理トレーニング101題』とほぼ同じだ。ただし,本書のほうが,より幅広い事項に言及されている。具体的には,指示関係についてに第2章第1節,価値評価型論証を取り上げた第6章など。演繹的推論については,3章にわたって詳しく述べられている。
この『論理トレーニング101題』も,本書と同趣旨の本である。両方買うのがいちばん良いと思うが,とりあえず,どんなものか見てみたい,という人には『
101題』がおすすめだ。こちらのほうが取っ付きやすいと思う。いずれの本も,実用性を第一に書かれていて,最終章が1つのゴールとして定められている。したがって,途中でよく分からなくなっても,ともかく最後まで読み進めることが大事である。著者は『
入門!論理学』のあとがきで,この2冊を書くにあたって,過度の理論化を避けた旨,述べている。本書の途中で,この点に疑問を覚えたとしても,あまり深く考えこまないほうが良い。
なお,伊勢田哲治『
哲学思考トレーニング』は,本書を,クリティカル・シンキングの本として,巻末で紹介している。