著者の作品はとにかく重い。無菌室のような現代日本を何気なく生きてきた私にとって、この作品は人間として生きていくために不可欠なひとつの重要な視座を与えてくれたように思う。
特に「熱狂」の章に見られる、グリア行為をめぐる著者とマンジュールの対話は、いつの時代においても色褪せることのない、揺るぎない普遍性を持っている。また、「ニンゲンは、犬に食われるほど自由だ。」という過激な文と衝撃的な写真は、正常な死をも汚物として隠蔽する異常な日本社会を中和し、隠蔽されていることにすら気付かず日々を送る我々の意識を覚醒するに十分な重みをもっている。
東京という大都市と四つに組んで戦った男たちの情熱に敬意を表したい。そしてこの日本という国が、著者の表現活動を受け入れられる懐の深い、成熟した国になることを願う。
それにしても、―「いつくしみ」は人を変える、だが「憎しみ」の言葉は人を変えない。―という、あとがきに付された一文が当時の日本のみならず今日の世界をも鋭く批判しているようで、読後しばらく頭を離れなかった。