イマニュエル・ウォーラーステイン (Immanuel Wallerstein,1930〜)は『近代世界システム』等を著わしたアメリカの社会・歴史学者であるが、彼の提唱する歴史理論=世界システム論のエッセンスを平易に概説したのが本書(Historical Capitalism with Capitalist Civilization)である。
彼は、「資本主義」を先ず「歴史的な社会システム」として押さえ(史的システムとしての資本主義)、その第一の特徴を「資本の自己増殖=あくなき資本蓄積」とし、そこから彼独特の資本主義的世界システム論(「中核−辺境」「インターステイト・システム」等)が展開される。そして、そのアプローチの特色は演繹的推論を排している点にある。
ウォーラーステインは、方法論的にはフランス・アナール派歴史学を代表するフェルナン・ブローデル(Fernand Braudel,1902〜1985)の手法を踏襲して「資本主義」の帰納的論証を試みている。ただ、ブローデルは、二人の基本的な視点の一致は認めるものの、彼独自の「世界=経済」論に基づく別の歴史解釈も示している(『歴史入門』参照)。
また、我が国でも金子勝氏が世界システム論に対する批判(覇権国の不存在等)を行っているが(『市場と制度の政治経済学』参照)、本書ではインターステイト・システムにおける「ヘゲモニー」の在り方にも論及しており、この指摘は概ねクリアされていると言ってよいだろう。いずれにしても、ウォーラーステインに係る論争の種は尽きそうにない。