東福寺は、京都髄一の紅葉の名所として有名な大寺院です。臨済宗の禅宗寺院特有の簡素で静かな境内は普段は近隣住民の憩いの場所として親しまれています。
本書でも詳しく掲載してあるように、国内最古の国宝・三門をはじめ、重文の禅堂、東司、浴室など京都五山文化を担う多くの文化財を抱える由緒ただしき寺院です。大伽藍が立ち並ぶ境内はいつも静かな雰囲気が漂っており、他の観光寺院とは落ち着きが違います。もっとも紅葉の時期は普段の佇まいを一掃するような喧騒に満ちていますので、それを覚悟すれば他では見られない紅葉観賞ができると思います。
本書は、東福寺の魅力を写真と文章で紹介したもので、学術的にも美術的にも価値の高い出版物でした。
檀ふみによる「巻頭エッセイ 東福寺散策」は素晴らしい内容と見事な文章でした。多くのエッセイを出版している女優の文の冴えは並みの作家を凌駕しています。重森三玲による方丈の庭園にまつわるエピソードや通天橋の美の表現力など、簡単な言葉で綴られていますが、文化や歴史を平易な言葉で魅力的に表していました。これを読むだけでも値打があります。
他は、臨済宗東福寺派管長・東福僧堂師家の福島 慶道師による「現代へのメッセージ 東福寺と径山萬寿寺」、永井慶洲「慧日山東福寺の歴史」、村井康彦「東福寺のDNA」、蔵田敏明「東福寺文学散歩」、辻唯雄「東福寺と明兆」、白幡洋三郎「東福寺の伽藍面と塔頭庭園」、永井慶洲「東福寺の塔頭」、石川登志雄「東福寺の文化財」という各分野の著名な歴史学者による魅力ある文章が掲載してありますので、読むだけで東福寺の全容が理解できるでしょう。