前著が今手元に無いので誤解もあるかもしれません。
まず、「追加」ですが、この部分が実はとても分量が多く、記述が多くなっています。
追加されている章が「事故・事件の続発と開発利用低迷の時代」となっています。
従って、ここにJCO事故ともんじゅ事故と東海再処理工場爆発事故が全て含まれます。
また、いわゆる事故だけでなく、この章で通史的に扱われているのは、
電力自由化論の台頭とそれの実質的な頓挫の過程、福島県の佐藤栄佐久知事の反乱などまで広がっています。
この「追加」分で恐らく本書の1/3程占めます。
あらためて90年代後半から福島原発事故まで見渡してみると、
この分量の記述が必ずしも冗長というわけでなく、
本当に「事故・事件の続発と開発利用低迷の時代」だったのかもしれません。
あくまで個人的な門外漢の感想ですが、あと10年くらい経ってから福島原発事故を振り返ったとき、
90年代辺りから2011年までは不吉な下降線の序章とその転換点として思い出されるのかもしれないと思いました。
「追加」以外の部分でも、加筆訂正が実はかなり広範にあります。
すぐわかるところでは、2元体制的サブガバメントモデルという印象的な用語が、
「2元体制的国策共同体」と言い換えられています。不要な想像を避け直感的にわかる言葉に置き換えたようです。
また、前著に比べると2元体制を構成する科学技術庁グループと電力+通産グループに関して、
それらが2対で国策を代表するという視点だけでなく、両者が利害を異にしていて、
最終的には科学技術庁グループ→衰退と電力+通産グループへの原子力政策全般の移譲が明確にされています。
(ひょっとすると、前著でも指摘されていたが印象に残っていないだけかもしれません)。
原発関係の著作では珍しく、科学技術庁の開発関係で核融合や原子法レーザー濃縮技術についての解説があります。
前著と同様、原子力発電に関連した通史としては、全てを概観出来るというとても貴重な本です。
特に科学技術庁関連で核燃料サイクルについて全体像と開発の歴史を頭の中で整理するのにとても役に立ちました。
前著を読んだ方も、購入して全く問題ありません。
これからこの分野に興味を持つ人にも十分役に立つと思います。