魏志倭人伝には卑弥呼=邪馬台国の女王と書かれていると多くの人の頭脳に刷り込まれていると思うが、中国の史家(三国志の陳寿)にとって中華の周縁に過ぎない倭の情報が正しく伝わっていたのか、偏見に基づく誤解があったのでは、と魏志倭人伝等の中国の文献史料を徹底的に批判検証する。邪馬台国の位置が定まらない歪んだ地理感覚に依拠している倭人伝だから、その他の記載の信憑性を疑う態度は正しい。
著者は古代の女性名、専ら鬼神に仕えた女性首長の有無を考察し、卑弥呼は個人名でなく、職名だとし、宗教的役割は担ったが、王ではなく、倭人伝に登場する弟が国王だとする。
さらに何故「卑弥呼職」が初代・某女と2代目・台与のときに必要とされたかを、第一・二次倭国大乱、その間の狗奴国との戦争と関連付けて自説を展開する。
魏志倭人伝の記載を全く嘘とはせず、最新の考古学知見や他の文献資料に照らすと、正しくはこう書かれるべきだった、という姿勢だから、あり得る一つの仮説として興味深く読んだ。ただ、先人の研究(特に松本説)に依拠している部分があり、その具体的論拠も紹介してくれたなら、説得力が増したと思う