10年ほど前、医薬翻訳の特集ではある翻訳会社の社長が、分厚い内科学・外科学の原書を紹介し、これをマスター出来なければ医薬翻訳はムリといっていた。その学習法は素人目からみても的を射ているとはいい難かった。近年、その方法は掲載されなくなった。より実践的に実現可能性のある学習法の紹介へと転化してきた。
今回、特に有益だったのは「私の医薬翻訳学習法」という体験記だった。筆者は婿として寺に入り住職となるが、それだけでは食っていけないということで医薬翻訳を目指したのだそうだ。筆者は「1万時間(毎日10時間学習して3年弱)で最低レベルに達すると判断し実行した。「医薬一般に関する知識」の身に付け方は、もう少し詳しく書いて欲しいところだったが、ともかく学習への集中力が凄まじい。僧侶としての勉強もし、3つのアルバイトを掛け持ちし、お寺そのものの仕事もし、その上で12時間の学習を成し遂げたという。
結果、学習して1年半の5000時間でトライアル合格、ほんやく検定医薬英和1級合格してデビューしたとある。
私が集中的に学習できたときは、まだ独身で、1日7〜8時間もやるとかなり疲労した。しかも3ヶ月で息切れ、長い休憩に入った。
体験記の筆者はいう、「これを成就させないと家族が路頭に迷ってしまう」と。そこまで追い詰められたとしても、その過酷な学習を続けられたのは、才能に恵まれていたのだろう。
この本全体としては、辞書、ツール、学習書、ネット情報など役立つ部分が多い。「入門書」「ガイダンス」の位置づけになるのだろうから仕方ない部分もあるが、治験や臨床試験で発生する文書を掲載して解説してほしい。英和対照の関連書を探しても適するものがない。
また、治験翻訳や臨床試験についての学習書をぜひとも出版して頂ければと切望する。
イカロス出版『医学薬学翻訳事典』は、治験、非臨床、臨床試験などの手順を詳しく説明した類稀な名著だったが、定価(5,500円)に対し絶版となった現在では中古品が18,850円などというとんでもない値段がつけられている。