各誌や日経のサイト等で発表された論考を一冊に纏めてある。
非常に面白く興味深い考察がなされているので是非一読されたい。
一例を挙げると、地方における給与の官民格差を
「優秀な人材を確保するため」と正当化する言説は真っ赤な嘘で、
民間から人材を奪う結果に陥ってしまうこと、
日本の高齢層は既に北欧並の社会保障給付を受けており
例え幾らか削減されても給付は高水準であること、
(これは主に共済年金と厚生年金の受給者と思われる)
しばしば医療制度が高く評価されるイギリスは
日本と比べて遥かに育児支援に多額の予算を投入していること。
突っ込み不足の論考も散見されるが、
誤った前提での議論が時間の無駄であるのは明らかで、
当書を読んで経済リテラシーを高めて欲しい論者が
数えきれないほど大勢いらっしゃる現状が残念でならない。
追記:ひとつ重大なすり替えを発見。「人口が減ると貧しくなるとの説は誤り」と巻頭で主張されているが、正しくは「人口減少で貧しくなるとは限らないが、経済成長の足を引っ張るのは確実」である。著者も「何もしなければ日本は毎年0.5%ずつ貧しくなる」とP109で明言しているのだが。。
追記2:熟読した末の結論。著者は通説に厳しいが、自説に対して甘い。生産性や構造問題に関する分析は粗過ぎる(90年代に高生産性の製造業から低生産性の建設・サービス業へ労働者が移動したことを問題視する池田信夫氏の方が説得的)。また、「若者の雇用改善は少子化対策になる」との説は根拠薄弱。出生率はバブル期も含め一貫して下落基調にあり、若年失業率と出生率の相関性は低い。欧州諸国の事例で、育児関連の社会保障予算比率の方が影響大なのは明らか。