詩人の荒川洋司さんお奨めの辞典です。
漢和辞典は、日本語の辞書でも中国語の辞書でもないどっちつかずの「ぬえ」のようなものだとの指摘が高島俊男氏らによってなされています。現代日本語の語彙は(1)中国の古典から漢字と共に輸入したもの(2)和語(古くからの日本語)(3)明治時代に西洋の概念を日本に輸入するために漢字を使って翻訳したもの、の3つからなっています。漢和辞典は(1)のみを対象としているため、日本語の辞典ではなく、かといって現代語や口語を収録していないため、中国語の辞典でもないというのです。
本書はそういった現状を憂う人達によって編まれたものです。漢字を中国のものではなく、もはや日本語の一部になったものと考え、語彙や用例もこれまでの古典籍ではなく日本人になじみのあるところから採録しています。ものは試しに「花」という字から始まる語彙を引いてみましょう。
『角川漢和中辞典』で引くと「花下(かか)」「花子(かし)」「花天(かてん)」…と普段なじみのない語が続きます。
『新潮日本語漢字辞典』で引くと「花一匁(はないちもんめ)」「花火」「花魁(おいらん)」など聞いたことのある語が並びます。どうでしょう、なかなか便利そうだと思いませんか?
一方問題点もあります。日本語の語彙を中心に据えているということは、今度は逆に国語辞典の漢字語彙を抜き出しただけのものではないか、という批判がありうるでしょう。編者の小駒勝美氏は引き方で差別化を図っていると述べていますが・・いずれにせよ、より良い漢和辞典への模索は今後も続くでしょう。