中巻に入りいよいよ話は頂点に上り詰めていきます。明石から帰還した後が時代となります。登場人物も上巻での紹介にとどまっていた女性たちもその宿命としての全体像がより深く描写されていきます。末摘花や花散る里もより大きなスペースが割かれてそれぞれの運命の変転と役割がたどられていきます。ここに田辺さんの好みを見出すのは考え過ぎでしょうか。それに伴い源氏の多面的な側面とそれへのクールな観察眼もも浮き彫りにされていきます。
中巻にはいくつもの盛り上がりの場面があります。やはりその頂点は、if there is a paradise in this world, here it isともいうべき六条院の完成のシーンでしょうか。ここで一つの頂点が達成されます。そして全巻を通して影のプロデユーサーとしてその存在を静かに主張するのが紫の上でしょうか。さまざまな女性の育ちや成長にかかわっていくことにより、源氏の政治並びに美的なプロジェクトへの欠かせないパートナーとなっていくのです。
この六条院のシーンに続くのが、玉鬘の登場です。この部分は著者の読者へのサーヴィスでしょうか、九州弁満載のユーモラスな書きぶりと起承転結の物語となっています。この悪乗りは、近江の君の登場と大阪弁の突然の使用によって頂点に達していきます。