一生見る事はないのだろうと思っていた作品でしたが、思いがけず今回DVDで見ることが出来ました。 どなたの企画か知りませんが、紀伊国屋書店さんの快挙です。 しかもなんとデジタル・リマスター+32ページの豪華ブックレット付き。 地方地主が没落して、先祖伝来の土地屋敷を売り払い、村を出て行くまでの様を描いた(本来は)悲劇なのですが、まったくのんびりした彼の日常を随筆のように綴った異色作です。 決して気張らず、片意地張らず、しかし程よい叙情性が盛り込まれた、不思議な温かみに溢れた逸品として仕上がっています。 この様な作風というのは日本映画から決して失われたわけではなく、確固とした伝統の話法として今でも生きていると思うのですが、何しろ日本人のライフスタイルや日本の風景そのものが大きく様変わりしていて、なかなかこの様に“心に染み入る−”という出来には至りません。 ゆえに、こういった作品の発掘は意義が大きいと思います。
オール・ロケーションの豊かな農村風景、戦前最大の剣戟スター大河内伝次郎の凋落したオジサンぶり(しかし、やはり独自の風格を醸し出しています)、びっくりするような移動撮影のテクニック(これはホントにすごいです)など、素朴な作品ながら見所は多いです。 なお、私がこの映画のことを初めて知ったのは、佐藤忠男さんの著書、“日本映画の巨匠たち”第一巻の清水宏監督の章を読んでからなのですが、この作品に関連して書かれた“風流に生きる”という一文は秀逸な文明論だと思います。 機会がありましたら是非ご一読を。