''この手の書評を書いたことはないのですが、初めて書かせられる程の内容でありました。
まず、全体として構成がよくない。中世ヨーロッパというタイトルなのに、東欧のことは殆ど扱われていない。ブルゴーニュ家やアンジュー家について重心を置いている視点はいいとしても、対象とする「ヨーロッパ」の定義と枠についてもう少し検討した方がよかった。「中世フランスとブルゴーニュ史」という方が妥当だと思う。ユダヤ人に別枠を設けた点については評価できる。しかし、しかし何より読みづらいのが、編者である堀越孝一氏の文体。彼の文体は、意識してそうしたのか、コラム調であり、それが非常に読みづらい。例を引用すると
p82「「皇后モーというわけで、「モー」はマチルダの卑小辞と思うが、よくわからない。「マオー」とも呼ばれたという。だからか?まさか」
何が「だから」なのだろう?言いたいことは直感的にわかるが、文章としてはどうかと思う。こうした例をあげるときりがないが、もう一つ。
イングランド王ジョンは通常「失地王」と日本の本では記載されるが、本書では「領地の無いやつ」と訳していて、多分これが原語のニュアンスに近いのでしょう。それはいいのですが、文中「領地のないやつは出頭しなかった」と出てくる。また堀越氏のパートは筋もよく読めない。アンジュー家の話をしていたら、コインに話が飛び、続いてフィリップ2世に飛ぶ。それぞれ話の関連はあるのだが、どうにも「徒然な」感じで展開を見せるので、非常に戸惑う。突然挿入されるコラム部分も、コラムである必要を感じさせない。本文自!体が自由に飛翔しているので、わざわざコラム部分を枠を設けて区切る必要がない。コラムも本文も同じような流れの中に置かれている。
最後は氏名と地名。通常スティーブンとかかれる王を「エティエン」、「ユーグ」を「ウーグ」と記載するのは、原音に忠実に記載する最近の傾向として良いのですが、少なくとも「新書」の読者相手には、括弧つきで日本で一般化されている名称や説明を入れてほしかった。ヴァロアをヴァロ家というのは中世フランス語の発音なのだろうか?
正直堀越氏の著作は今後購入することは無いと思った。同じ時期に平行して「神聖ローマ帝国」を読んだこともあり、本書については辛口にならざるを得ない。