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まず、かなりの割合を占める、SFその他、マイナーな知的動向に関する評論がある。これらは、氏の守備範囲の広さを示すものではあろう。一部、意図してデタラメを書いているようである。ただ、この部分の善し悪しは、評者には評価不能。
明らかに出来が悪いのは、インタビュー形式の投資論の部分である。あまりに一方的と思われる記述もある。内容も、MBAレベルのファイナンスを越えていない。初等的なファイナンス知識をもって通俗本の批判をするというのは、ファイナンスの知識のある人がやりがちな娯楽だろう。しかし、ファイナンスや経済学の初歩的な理論の切れ味は、ある意味、その理論の限界でもある。その点に関する自覚なしに、切れ味のよい道具を振り回す文章は、とくに傲慢な文体で書かれると、みっともない印象を与える。
概して、社会科学系の文章は粗雑である。しかし、民主主義や選挙制度、権利に関する文章は、重要な内容や面白い提案を含んでいる。とくに、反民主主義的な記述は、学級会民主主義に辟易している読者に強くアピールするだろう。もっとも、権利に関する議論は荒っぽすぎる。いいたいことはわかるし、内容には、おおむね賛成でもあるのだが、やはり、もうちょっと精緻化が必要だろう。
経済に関する文章も、消費税アップ、ネット上の民営国家など、それなりに背景のある面白い議論がなされている。ただ、圧倒的な喰い足りなさが残った。胡となる議論を直観的によく把握している人なだけに、もっと詳細な分析と解説が望まれる。山形氏の、経済に関する長い文章があれば、ぜひ読んでみたい。
圧巻は「メディアと怪談とインターネット」である。この洞察は深くて鋭い。メディアと人間との関係を考える人の必読文献だろうと思う。最近は、ウェブやメールアドレスを持ったまま亡くなる人が出てきて、氏の予言が一部現実になってきている。書かれた時点が90年代半ばだということを考えると空恐ろしい気がする。この手の話を書かせたら、氏はやはり、超一流の書き手だと思った。
冒頭のマニフェストは、かなり楽しい文章である。この人は、左翼臭のないニューアカ残党というか、伝統的な学問や思考方法の重要性をちゃんとわかっていながら、スッチャカスッチャカやっている人なんだという気がする。「エリート主義」だといいながら、上位一割とか二割とかいう、非常に緩い規準の話をする。案外、目線が庶民的だといえよう。また、衒学的なこけおどしがない点も評価できる。
惜しむらくは、文体に一部、マガジンハウス的なクリシェが混じる。文体が命の人だけに、このあたりには慎重であってほしい。
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