司馬遼太郎氏がドラマ原作となる新選組血風録を発表したのは1962年。それまでの新選組のイメージとは幕末史観、あらゆる小説、映画に至るまで残虐非道の人斬り嗜好集団の汚名が常に付き纏い、中でも近藤勇、沖田総司は美化されても土方歳三は絶体巨悪の元凶とされてきたのだ。そんな土方に違う視点からスポットをあてその英雄的魅力を世に知らしめたのが司馬氏の血風録と後の燃えよ剣であった。新選組を史上稀有な近代的機能組織と位置付け、その組織を創造し、形成し、堅守し、崩壊してゆく旧政権の威信を京洛の地で天下に示しやがて旧時代と節義に殉じた土方と新選組隊士達を司馬氏特有の史観で鮮明に描かれた傑作だ。その血風録を1965年に映像化したのが本作で、当時全くの無名に近かった栗塚旭を土方役に起用し、近藤に船橋元、沖田には当時劇団の研修生に過ぎなかった島田順司、斉藤一に左右田一平など個性豊かな面々がまるで新選組を現代に復活させたが如く見事に演じている。脚本は結束信二で司馬史観をうまく咀嚼し、彼自身の創作技法を加え融合、深みのある脚本を生んだ。全26話中、大半を監督したのは河野寿一。秀逸な脚本を独特な演出力でリアルかつ繊細な映像世界に昇華させた。渡辺岳夫の美しい音楽も効果的にドラマを盛り上げている。司馬氏の小説を原作にこれまで数多くの映画、ドラマが作られてきたが、正直名作と呼ぶのに値する作品は極めて少ない。この約40年も昔に作られたテレビ映画、新選組血風録は司馬史観を当時天才的な人々が一丸となっていい物を作って表現したいと云う情熱の結晶がすなわち、現在も尚、世代を超えて新選組映像史上、最高傑作かつ不朽の名作、新選組血風録となったのだ。