阪神をこよなく愛する(その愛情は、同球団の多くのファンに見られるように屈折しているわけだが)著者は、歴代のミスター・タイガースと新庄を対比し、幾多の理解に苦しむ言動を引き合いに出しながら、彼の特異性を浮き彫りにする。しかして、リスク管理、確率論が主流となった近代野球にあって、新庄の言動のなかに、野球そのものの本質である「空白」=「過剰さ、幻想領域」を見る。そして言うのだ。
「泣いて笑ってズルーッとこけて、それでも私は新庄剛志を見つづける。新庄剛志にゼニを払うぞ」
藤村富美男が、江夏豊が。単に結果だけではなく、全存在をかけて「自分が自分でありつづける」ために、「いらんこと」=「美しいこと」にこだわった。彼らの中にあるのは「タテジマの“魂”」。それを著者は「永遠に不滅」であるとする。そして、その魂を受け継いだ「最後のミスター・タイガース」は、いまやニューヨーク・メッツの一員としてデビューしようとしている。本書は、そんな「新庄くん」への愛情あふれるエールであり、また阪神および阪神ファンに贈るレクイエムだ。(豊田義博)
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