‘当時の新宿’が刺激的な一本。
粗筋だけみると二人の男女が出会ってから結ばれるまでの物語のようにも見えるが、その物語はそれほど重要ではなく主題への水先案内人的な役割といえそうだ。
この映画は(普通の意味での)物語の進行をたどる映画ではない(そういったカタルシスはない)。
挿入されるフッテージは一見脈絡がない。
非常に魅力的な横尾忠則(ユニセックス!)と横山リエ(当時まだ20!)。強烈な唐十郎と状況劇場(アリババが耳から離れない)。性談義やカウンセリング(若松孝ニの姿も!)。実際の映像(!)を使った交番への投石。当時の新宿西口の風景(『田園に死す』のラストを思い出した)etc
幻想も現実も境なく雑多に放り込まれたようにも見えるそれぞれのフッテージは主題である(大島渚が見た)60年代末の新宿そのものを体感する為に配置されていることがわかる。本当の主役は、猥雑な、なにかの変革の予感に満ちた、爆発寸前の街や人々や風俗だ。
ところで、私自身はこの映画公開後に生まれている。
はじめて(一人で)新宿に行ったのは80年代だった。この映画公開から13〜14年も経っている。猥雑でエネルギッシュな街だとの印象を覚えているが映画で描かれたような雰囲気はだいぶ薄まっていたように思う(思い出すとそんな気がする)。
21世紀も10年以上過ぎた今、実際に‘当時の’「何かが爆発寸前」といった雰囲気を味わうことは不可能だ。
だがこの映画はそれを(一部)味あわせてくれる。そんな風に楽しめればこの映画の価値は古びることはないとわかる。
余談かもしれないが、
『日本春歌考』『新宿泥棒日記』『東京戦争戦後秘話』は似た構造を持っていると思う。(並べて観ると楽しい)
三篇とも青年期に差し掛かった少年の物語の側面と当時の(主に東京の)状況や風俗との相克を映画の構造として採用している。
そして
その三本の中でもっとも熱い(マグマのような)状態で差し出されているのがこの映画だと思う。
(『日本…』は胎動の映画であり、『東京戦争…』終結を示す映画のように私には感じる)