インフルエンザ研究の第一線で活躍なされている著者の科学読み物です。現役・第一線の科学者の書かれた本だけあって、内ネタ満載! 1977年に現われたAソ連型H1N1の驚愕の正体(p58)、H5N1の遺伝情報についてインドネシア政府のとったやっかいな態度(p35)、著者らがインフルエンザウィルスに代表される分節型RNAウィルスの遺伝子操作技術“リバース・ジェネティクス”を開発・発表した後に、著者らにアプローチをしてきたCIAのエージェント(p66)など、たったこの三ヶ所だけでも、買った人を落胆させない内容となっています。ところで“リバース・ジェネティクス”ですが、このテクニックは本を読みすすめていくとわかりますが、なかなかミステリアスです。この本は最後に付録として“インフルエンザ以外の危険なウィルス”の項目が付け加えられていて、ある意味、凝った構成になっています。インフルエンザウィルスならば、発生に必要な遺伝子の一セットは8本の分節した状態で存在しているわけで、“リバース・ジェネティクス”は、その分節して独立した状態の遺伝子を、相補的なDNAの状態で各々任意に操作し、再集合させるテクニックのようです。ある遺伝子を操作したとしても、それによって他の遺伝子が影響を受けることは原理的にありえず、各々の遺伝子を任意に操作することが可能となるのでしょう。この技術にさらに、再集合して分節した状態にあるRNAを接合して一本鎖としてしまう技術が付け加えられたとしましょう(それは簡単ではないでしょうが)。すると分節型であるかどうかに関わらず、任意の遺伝子を独立して操作することが可能となってしまいます。だから逆にインフルエンザウィルスに限られる必要はないのかもしれません。それにしても現代は、簡単に遺伝子操作ができてしまうのですね。ある日、強毒性のウィルスが出現する、と。たしかに麻疹ウィルスなのだけどもそれぞれの遺伝子が少しづつちがう、などというSFまがいのことがおこることもあるのだろうな、とも考えてしまいます。