米国発の金融至上主義の崩壊で、世界中の企業や個人が歴史的痛手を負った。その直後、米国の指導者が変わることが決まった。重大な転換期にある今、著者は『米国追従の来し方から脱却し、日本は世界で一目置かれる独立不羈の立場で進むべき』というメッセージを発している様に感じられ、強い共感を覚えた。
その意味で、書名から想像した単なる公共事業による税金のバラマキ論ではなかった。著者は、貿易立国・海洋国家という日本の特性を十分に生かした戦略性の高い経済政策を計るべきだと論じている。まさしく石油高騰やリーマン・ショックの様に、国内企業が元気であっても他国の政治・経済情勢に大きく左右される、日本経済とはそうした宿命にある。このリスクの緩和策として、高い国際競争力を持つゲートウェイ(国際貿易港・国際空港)の戦略的な社会資本整備により日本の国際的な拠点性を向上させ、ビジネスや観光などのグローバルな経済活動における求心力を高めていくことが有効な手段であり、それらを通じた内需拡大策は、国内に蔓延する経済の低迷や雇用不安の解消にもつながるという。
近年の政治家やマスコミの論調とは異なる少数派だが、物事の在り方には『中庸』と『調和』が必要であり、それらが長期的な成功の秘訣であるとする著者の主張は一貫しており、傾聴に値する。役所、企業、個人の思考が、ともすれば原理主義的であったり、至上主義でバランスを欠いた面が顕在化している昨今、久方振りの良書を一気に読み終えた。
ところで、著者の森田氏はこのところテレビで見かけないが、どうされているのか。戦中・戦後の社会経済情勢を体感している言論人は、ますます貴重な存在である。この転換期、著作だけではなく、生の声でも議論を沸かせて欲しいと思う。そういう思いを込めて☆5つ。