平安時代を舞台とした異色怪奇時代劇で、人間のどろどろとした業の深さや、武士や貴族といった支配階級の腐敗を描いています。SF・幻想など、様々な超常的な要素を含むのも特徴です。
滑稽なユーモアが入る事もしばしばで、「光る佛(20頁)」はその最たるものです。超能力を授ける謎の佛が背中に癒着した法師の話で、アイデアの秀逸な力作だと思うんだけど、妙なノリとかオチとか色々とシュールな仕上がりです。
平安路線の中で最も名が通っており、名作との評価を確立しています。実際どのエピソードにも見るべき所があります。ただやはり一般的な漫画とはだいぶ手触りが違うし、好き嫌いは絶対にあるので、入門者の人はそこは注意してくださいね。あと絵の描き込みに関しては、花輪作品としてはそこまで凄くないです。
本作の白眉は、表題作「鵺」だと思います。SFともファンタジーともいえる独特の世界観や奇異なビジュアルで、たった14頁なのに、読者を強く魅了します。ある男が大火で焼死するのだが、その遺体は人間の形をしていなかった。彼とその家族には、血筋に関する秘密があったのだ…
「亀男(24頁)」は、豪族の長男だが争いを好まず、ひたすらに亀に憧れる男の物語です。池で泳ぎ魚を丸飲みする訓練に没頭する彼は、ついに木彫りの甲羅に身を包み、世を捨てる決心をする。果たして彼は、亀になる事ができるのか…
「蟻地獄(25頁)」は、屋敷の地下深くに眠るという黄金への妄執の果て、下半身が蟻地獄になってしまった女の話です。彼女は自在に土に潜り、人を引きずりこんで食べてしまいます。もっとも彼女以外も、黄金に取り憑かれた悪人しか出てこないんだけどね。蟻地獄人間の姿は、不気味でインパクトあります。
あと「家蟹(22頁)」の冷笑的なひどい終わり方とか、さすがだと思いました。
第一話「鵺」
第二話「お力所」
第三話「光る佛」
第四話「信奇山」
第五話「外術」
第六話「蟻地獄」
第七話「胎内岩」
第八話「不幸蟲」
第九話「三二九一九六九六(みにくいくろぐろ)」
第十話「亀男」
第十一話「家蟹」