夏休みが終わる頃の八月の夕焼け空は、まだ夏の力強さを残しているのに妙に哀しい紅色で、十数年も同じ思いを続けていれば、単なる感傷のみとしてではなくて、記憶の古層をなすに至っている。否応無しに何かが変わっていく事へ抗うことも出来ない、そんな虚しさを重ねていたのかもしれない。けれど、それは悔恨としてのみ残るものでもない。夏の終わりを迎える度に、あの頃の自分は確かに大人になっていたという実感があった。
この作品を作者の林ふみの氏は、「子供は何故大人になるのか」を考えつつ描いたという。この物語においては設定は原作とは異なり、エヴァの中には母の魂はないけれど、14歳から年を重ねて、チルドレンはエヴァに乗れなくなっていく。子供でいられなくなること、というその正体の分からない苛つきと戦いながら、チルドレンはそれぞれに、何かを積み上げて、大人になっていく。アニメにおいては常夏という形で現れた、時間の流れない、即ちキャラクターの成長を許さない第3新東京市という舞台から逃れられなかったのと正反対に、彼ら子供たちは、第3を離れ、大人になって、そして「還ってくる」。つまり、この作品は、本編を受け止めた上で、本編とは違う形で、「夏の終わり」を描き出してみせた。その巧みさは称賛に値する。
簡単に6巻そのものについて。それぞれの小編は独立しつつも、前の話は後の話と伏線などで繋がっている。一話と二話は、ミサト・加持・リツコといった、この作品ではあまり活躍の無かったキャラの、アニメとは別のキャラながら共通の何かを感じさせる造形がよい。第二話で登場したレイの悩みは、第三話でトウジに継がれ、そして最終話のシンジとアスカの物語へと繋がっていく。オムニバスという形式を上手に活かした構成はなかなか楽しい。