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新・雨月下 戊辰戦役朧夜話
 
 

新・雨月下 戊辰戦役朧夜話 [単行本]

船戸 与一
5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

時代の大きなうねりの中で、闘って斃れていった男たち。戊辰戦争で闘った各藩の勇者。日本近世史を舞台にした壮大な叙事詩(下巻)

内容(「BOOK」データベースより)

白河口は膠着状態にあった。西軍側は伊地知正治と共同で指揮をとるため、土佐の板垣退助が加わった。奥羽越列藩同盟軍による白河の小峰城奪回の総攻撃は8回とも失敗。長岡城を奪還したものの、負傷した越後の蒼龍・河井継之助は斃れ、そして秋田久保田藩が西軍側に寝返り、続いて三春藩が裏切った。奥羽越列藩同盟の瓦解が始まった。戊辰戦争がもたらしたものとは…常に叛史の視点から作品を生み続け、冒険小説を牽引してきた船戸与一が、近代への幕開けに真っ向から取り組んだ渾身の巨編。

登録情報

  • 単行本: 496ページ
  • 出版社: 徳間書店 (2010/2/18)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4198629056
  • ISBN-13: 978-4198629052
  • 発売日: 2010/2/18
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 3.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
本書は小説の形を借りた、戊辰戦争総括であり、現在5巻まで刊行中の『満州国演義』(新潮社)の前段とも言うべき作品となっている。まさに日本帝国主義の生成過程を、薩長を中核とした官軍(西軍)の東北侵略戦争の中に見出だしているのだ。ただ、『満州国演義』でも見られる、間諜による謀(諜)略史観が、本書に若干の違和感を与えているが、それも総括を導き出す手段となっている。また、これまでの敗者の美学や判官贔屓や怨念で、東北での戊辰戦争流血譚を語るのではなく、奥羽越列藩同盟の欠点や齟齬を明確に抉り出しているのだ。
 大藩を中心とした緒藩の連合体である奥羽越列藩同盟は、「戦争目的」を救会(津)から出発して薩長政権に対抗する東北政権を展望するに至るが、「藩」がそれを疎外する。すなわち「一藩主義」が「建国」を疎外してしまうのだ。小藩の中には、他藩への義から自藩を顧みず戦った二本松藩や平藩の例もあるが、殆どの藩が最後には「一藩主義」に陥ってしまう。我が会津藩とて例外ではない。また「戦闘目標」も「一藩主義」のため分進合撃とはならず個別撃破され、軍議で土方歳三が、軍事総督就任に際し生殺与奪の権が必要としたが、これも「一藩主義」により拒否され「建軍」も疎外される。
 また封建思想により武士と農民が分断されていたため、武士間の戦いにすぎないと局外者あるいは反抗者となった農民は、近代総力戦の様相を帯びた戦闘では殺戮対象となってしまう。ただ庄内藩だけが農民、町民を組織し、豊富な軍資金で最後まで戦ったが、「本間様には及びもないが、なってみたいな殿様に」と謡われた豪商本間家の存在がその要因であった。
 最後に著者は明治期の日清、日露戦争に戊辰戦争の人脈を見る。もし奥羽越列藩同盟の戦いが違ったものとなっていたら。そこに著者の総括の真意がある。
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形式:単行本
 戊辰戦争を描く小説は、「官軍側」(会津では「西軍」と呼ぶ)から描くか、あるいは奥羽列藩同盟側から描くか、通常は視点を固定させているものが多い。そうすることによって、片方の側から見た戊辰戦争の解釈を明確に提示することができ、また、読者も感情移入しやすくなる。だが、この小説は、違う。長州藩の間諜物部春介を軸に、会津藩の家老奥垣右近、河井継之助に心酔して長岡藩のために働く元博徒の寅蔵の三人の視点から描いている。

 三人の視点から描くこと。それにより、戊辰戦争の複雑さ、多面性がそのまま提示されるのだが、一方で、何らかの立場からの戊辰戦争のわかりやすい解釈はなく、登場人物への感情移入も困難になる。いわば、戊辰戦争という権力の確立していない状況、アナーキーな状況に読者は放り出されるのである。
 
 船戸与一というアナーキーな作家は、これまで、アナーキーな人物を描いてきた。だが、彼は、ここにきて、多面的な視点で歴史を描くことにより、小説技法そのものをアナーキーにしているように思える。あるいは、歴史の統一的・体系的な解釈を否定しているのだろう。
 船戸与一のこのチャレンジには拍手をおくりたい。だが、小説として成功しているかといえば、ノーである。複雑な状況を、三人の人物を中心に細かい場面転換でつなぐやり方に、読者は困惑するだろう。戊辰戦争の歴史書などを読み、よく背景をよく知った上で読むことをおすすめする。
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By dek
形式:単行本
船戸与一が、紛争地域のに飛び込んでの現場からの語り口を身上とする作家であり、ルポライターであることは誰も否定するまい。
だが、ひたすら敗者目線の判官びいき作家ではないし、なりえないことをまず強調しておかなければならない。平成の世に至るまで長州/会津の怨恨を残す戊辰戦争を描いた本作だからこそ。
システムとは常に一定の距離を置こうとする主人公がいるのはいつもどおり。だが、人の上に立ち、国家を造り上げて行く情熱に憑かれた人たちのことも実に好意的に描いている。布袋の寅蔵が長岡の軍議への参加を許されて喜んでいる描写など、岡田以蔵を語る司馬遼太郎のようだし、同じく寅蔵が覗き見る山県狂介の迫力も「体制はクソ」一元論の小説なら全く必要ないものだ。
ただ、それら人の美しさもダメさも全部ひっくるめた上で、もたらされた「結果」のむごたらしさは絶対外さない。いかなる高尚な理念の上だろうと、いかに許しがたい怨恨だろうと、それによって生産された死体はもれなくむごたらしく、ひたすらに悲しい。誰の手によるものだろうと強姦は悲惨だし、貧困は凄絶を極める。人を動かす理念を否定しない代わりに生まれた惨状があるならそれも否定しない。船戸の目線は戦場に転がる死体からの目線だ。
「ナントカ史観」みたいな、どっちが悪かったなどと言う話はカケラもない。ただ、日清戦争での戦死者以上の死者を出したと言うこの戦いの死体を見てみろ。人が国家だか観念だかの名のもとにに人を殺す、という現象そのものを目を見開いて噛み締めて見ろ、そう言われている気がしてならない。会津降伏後放置された死体が会津人だけのものだろうと官軍のものを含んでいようと、死体が放置されたという事実のむごたらしさは決して消えるものではないのだ。
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