これまでに、1万数千冊(!!)の装幀を手がけたとされる装幀家、菊池信義が装幀について語り倒した本。「装幀についての本」である。
その世界にどっぷり浸かり、かつ自分でも開拓してきた著者の言葉だけあって、装幀についての独自の哲学が散りばめられている。
彼によると装幀とは、「作品の最初の評」だという。考えてみれば、装幀家というのは作者と出版社の者以外で言えば、最初に作品に目を通す者である。その装幀家が作品からうけとった印象、それを「本」という物質にして、世に送り出す。
その現れだろうか。この本では、「作品」と「本」という言葉が、明確に区別されて使われている。そこには作者ではなく、あくまで物質としての「本」に深く携わっている人間、装幀家としてのプライドが見え隠れする。
他にも、「囲い込み」と「解き放ち」など、著者独特の感覚的な言い回しによって、装幀の極意が語られる。
具体的な話になると、専門用語が多くて理解することが難しくなってくるが、おおよその部分において、商業ベースに扱われるデザインや本の装幀、つまり「芸術ではあるけど、売れなければ評価されない宿命のもの」を作る人にとって欠かせない、心構えが横たわっているのではないだろうか。
装幀家志望の人、あるいは今まで装幀にさして興味を持たなかった者必携の本。