新書でナショナリズムというのが手軽にわかるし、その思想的な流れもわかるので、便利だとは思う。
でも、日本のいわゆる「左翼知識人」がなぜナショナリズムに対して批判的なのか。というか、なぜ「悪」ときめつけるのか。
その点こそ、きちんと明確にすべきことなのだけれども。そうではなく、ナショナリズムの思想の出自から語られても、そこは説得力がないのではないだろうか。
思うに、日本という国においては、戦前戦後を通じて、「国」という言葉にいろいろなものが回収されてしまっているのだと思う。それどころか、戦前と戦後で国家というものが連続性を持って語られている。そのため「国のために死んだ」人たちがいても、その国が残っていればうかばれない。そうしたことから、「国」に慎重になってもしかたないと思う。
あるいは、「国」と「政府」を混同させ、あるいは「民族」と「国」を混同させる。オリンピックに出場するのは「国」なのか「民族」なのかその地域の「個人」なのか、とか。そういったことが、意図的に、あるいは無意識に行われている。
あるいは、人格を持たない「国旗」は礼をする対象として正しいのか、「国歌」を歌うことは強制されるべきことなのか、とか。
つまり、本来著者が語るべきは、「ナショナリズムは悪なのか」ではなく、「ナショナリズムは日本においてなぜ悪なのか」だし、それに応えられない限りは、いわゆる「左翼知識人」への批判とはなりえない。
ということで、本当に申し訳ないけど、星二つで。
萱野に対しては、国家と暴力に関する議論など、ほんとうに良い意味でインパクトを与えられてきただけに、がっかりです。