むかし理研の長岡半太郎が、金は無くとも紙と鉛筆さえあれば、
と言ったように、数学や物理には「孤高」を装いたがる性格が
あると思います。
我々は自然現象を普遍的に捕らえる作業に人生の全時間を費や
しているのだ、みたいな。
新・物理入門を読むたびに、断片的ではあるけれど「受験物理
やってて良いのか」というような著者の迷い、もしくは、高校生
への啓蒙を感じとれます。
多くの読者にとっては、他のいくつかの問題集や解説書を回って
から本書にたどり着くというのが普通でしょう。その時点で、ある
程度感覚的に馴染んでいる方には面白い本であること間違いないです。
重力と摩擦力の違い--保存力・非保存力、気体分子運動論、など
など。 簡素ですが、ほおーー、って。
本文の欄外に学生が間違い易い点を喚起する注意書きが常時併記
してあります。予備校講師らしいこのような配慮がうれしいです。
数学的要素についても、何をしようとしているのかさえ判っていれば
細かいところは読み飛ばしてもOKでしょう。
さてさて。江沢洋という先生が書いた力学の本があるのですが、それ
も本書同様に進取の高校生向きです。ただ、はっきりいって新・物理
入門のほうが読みやすいですし、やさしいです。さらに、本書にはペア
の大判演習書・入門問題演習というやりがいのある問題集が出てます。
網羅性をカバーするには入試前の秋から他の本で補えば充分だと思い
ますので、それ以前にどこかで本書と演習を2−3回繰り返して見てお
かれたら良いと思います。ゆるぎない自信と地に足のついた余裕が持て
る筈です。
私はこの本を、高校物理の正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)と呼んで
います。