題名通りの内容を全5章で説明した物だが、体裁が整っていて読み易い。例えば、モスアイ(蛾の眼の構造)と言った身近な話題から始めて、続いて化学的分析・概説を行ない、最後に応用事例を紹介するという一貫した姿勢を貫いている。私の様に化学を専攻しなかった者にとっては、正直付いて行けない技術的解説もあったが、全体として興味深い内容になっている。章毎(あるいは節毎)に執筆者が異なると思うのだが、それにしては統一感があって感心した。
私は主に計算機・通信を専門にしているので、ハードディスクや半導体、Liイオン電池の話題は比較的親しみ易かったが、それらを「材料」という観点で見た事は無かったので、その意味でも新鮮だった。この他、"自己組織化"等の分子の性質や医療分野の話題等はそれこそ初耳の事が多く参考になった。"人工光合成"の話題も夢に溢れているが、一番印象に残ったのは"金ナノ粒子"の話題で、その特性に驚くと共に、その実用例には思わず笑みがこぼれた。また、本書で紹介されている各種の最前線の材料に関する研究・開発が日本の企業・大学で行なわれているかと思うと心強い。専門知識を分かり易い形で読者に提供すると言うブルー・バックスの長所が出た良書だと思う。