この新・夢千代日記は、夢千代日記、続・夢千代日記にくらべ、2倍の長さになっており、そのぶん夢千代以外の人の事も丁寧に語られています。この作品での相手役は松田優作。次第に夢千代に惹かれてゆき、夢千代の体を気遣う記憶喪失のボクサーを演じ、また同時に*前田純孝も好演しています。夢千代も松田優作扮する記憶喪失の男に哀しい愛を貫き、今までに無く強く愛して欲しいと願うようになります。この作品ではいろいろな愛の形が描かれており、中国残留孤児とその背景にある愛情、夢千代の母の若いころの愛・・・。そして特にもうひとつの大きな愛情が秋吉久美子演じる金魚の愛です。失うものもあまりにも多い、でも愛さずにはいられない、相手役の小坂一也に一途な愛を貫く女の姿がまた哀しくも心に迫ります。特に小坂一也が金魚を背負って冬の荒波に向かうシーンは、忘れられません。
そして最後、松田優作は夢千代のために再びリングに・・・、夢千代は一人ラジオでボクシング中継を聞いている、そしてゴングが鳴る・・・。
*前田純孝(すみたか):号を翠渓(すいけい)といい明治十三年四月三日浜坂町諸寄に生まれる 兵庫県御影師範を経て東京高等師範に進み雑誌「明星」で石川啄木とともに名をなす 卒業後大阪夕陽丘高女の教頭となるも、ろうがい(肺結核)におかされて失職 郷地諸寄に帰る。