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新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)
 
 

新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書) [単行本]

石原 慎太郎
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (41件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

列島を揺るがせた未曾有の震災と、終わりの見えない原発事故への不安。今、この国が立ち直れるか否かは、国民一人ひとりが、人間としてまっとうな物の考え方を取り戻せるかどうかにかかっている。アメリカに追従し、あてがい扶持の平和に甘えつづけた戦後六十五年余、今こそ「平和の毒」と「仮想と虚妄」から脱する時である----深い人間洞察を湛えた痛烈なる「遺書」

内容(「BOOK」データベースより)

列島を揺るがせた未曾有の震災と、終わりの見えない原発事故への不安。今、この国が立ち直れるか否かは、国民一人ひとりが、人間としてまっとうな物の考え方を取り戻せるかどうかにかかっている。アメリカに追従し、あてがい扶持の平和に甘えつづけた戦後六十五年余、今こそ「平和の毒」と「仮想と虚妄」から脱する時である―深い人間洞察を湛えた痛烈なる「遺書」。

登録情報

  • 単行本: 218ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/07)
  • ISBN-10: 4106104261
  • ISBN-13: 978-4106104268
  • 発売日: 2011/07
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (41件のカスタマーレビュー)
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安吾の誤読 2011/9/25
『新・堕落論』という名前のつけられたこの書物は坂口安吾の『堕落論』と似ても似つかない。
戦争が終わり、特攻隊員だった英雄は闇市に繰り出し、戦争未亡人となった女性は新しい夫をめとる。
戦後に見たそうした"堕落"にこそ人間の本性を安吾は見出す。
そして戦争に負けたから堕ちたのではない、人間とは元来そういうものなのだ、と『堕落論』は説き、
"堕"ちたものを嫌い、美しいものにすがる人間の心情にこそ人間の弱さを見出しています。
弱き人間は"堕落"を見るに堪えず、天皇制や武士道、靖国神社、忠臣蔵の四七士といった美しき理想をあみ出さずにはおられず、
美しさや処女性という理想にすがらずにおられない人間の心情は人間の弱さからくるのだと見抜く。
人間は本来的に堕落するものであり、その堕落こそ人間の本質であるという。
しかし、人間は堕ちていても、堕ちきるには弱すぎる(だから幻想にすがる)。
そして安吾は、天皇制や武士道といった大きな理想にすがることなく、人が自分自身の天皇(理想)を生み出すには、正しく堕ちきることが
大切で、堕ちよ、堕ちきれ、と最後に力強く語りかけます。
ここでは本質的に人間とは堕落しているのであり、安吾はそうした人間の性ともいえる堕落を肯定的にとらえる。
だからこそ安吾のまなざしは、慈愛に満ち、戦後堕落したようにみえる未亡人や、闇市に繰り出す特攻隊員にですら、
絶望せずしてこれが人間の姿だ、という肯定的なメッセージを与え、読後に爽快な感動が残ります。

しかし、この『新・堕落論』では、人間とは本来堕落するものではなく、"現代の"人間が特に堕落している、
という世代論に終着します。そこには否定的な暗いメッセージしかなく、明日への道標はない。
現代の人間をただ悪しざまにののしっているにすぎません。
そして、安吾が堕落を人間の本質とみなし新しい価値を与えたのに対し、
石原氏は堕落を字義通り人間の悪しきものとみなしており、堕落に対する解釈が全く異なり「論」を「新」たにするものはみあたりません。
むしろ「堕落の克服」という理想をこの本で掲げていますが、そうした理想の数々こそ
安吾が喝破したような、政治家の弱さゆえに編み出した幻想にすぎない。
いみじくも石原氏自身がこの本で生みだすメッセージに、安吾の言う政治家の弱さからの幻想の典型をみることができます。
安吾が今の世相を見たら、やはり人間とはそういうものなのだ、そして堕ちよ、と語りかけるような気がします。
「堕落論」を冠したこの著書は、文学者でありながら、そうした大きな誤読から始まります。
この本を読んだ読者はぜひ本家安吾の『堕落論』を読んでみてください。
今だからこそ得るものがあると思います。

さて、この本は「我欲と天罰」というサブタイトルがついている。
私はこのサブタイトルに惹かれてこの本を購入しました。
この著者が「失言」として騒がれた東日本大震災を我欲にまみれた日本人に天罰が下った、という趣旨の発言の真意をぜひ知りたかったからです。
この本の第一章で「平和の毒」と第二章「仮想と虚妄」において、著者は最近の100歳を超えた老人を利用した年金詐取や、
援助交際、近親相姦、出会い系サイトなどを引き合いに、日本人が我欲にまみれていると説いています。
それは序章で示されるように主にアメリカの間接的な支配に甘んじて作られた安易な他力本願が培養した
「平和の毒」のせいで、日本民族の無気力化による衰退、価値観の堕落による、とします。
それを真に反省する絶好の機会である、だから天罰が下ったと語ったそうな。
さて、天罰というものがあるかはさておき、仮にあったとして、天罰とは、罪を犯した者が受けるべきものでしょう。
日本全体にはびこると論じているこのような問題を、当事者全員が天罰を受けるならまだしも、
岩手、宮城、福島を主とした限られた人たち(そして「我欲」とは無縁であろう人たち)のみ
天罰として浴びるというのは、非常に失礼であるし、
これを機に自身の持論を開陳するならば、「災害利用」とのそしりを受けても仕方ないでしょう。
そして、この本では、実際は持論の開陳に主眼が置かれており、3・11を受けて著者が何かを語ると考えて買った人は、
損をするでしょう。実際本論は『文芸春秋』にて2010年までに掲載された文章の再録で、一部の加筆修正から成っています。
私はこの題名とサブタイトルに、編集者と出版社の「我欲」を見ます。
事実ベストセラーになっていますが、災害に対してなんらメッセージは発せられていません。
それどころか、タイトルにおいて「災害利用」のみならず「失言利用」もしており、なんとちゃっかりしていることか。
ぜひ売り上げは義捐金に回してほしい。

さて、本書の内容ですが、上記した通り題名とはほとんど関係ない石原氏の持論開陳の本です。
具体的には、一章の「平和と毒」が私的反米論と核武装論と教育論で構成されており、
二章はネット社会や携帯電話による高度情報化社会の到来を踏まえた、現状を憂えた現代社会論で構成されています。

私的反米論は戦中派なら多くが戦争の記憶が焼き付いており、多く聞かされており、それほど真新しいものはありません。
具体的エピソードが、私的反米に至る石原氏個人の屈辱史で構成されているので興味深いところもあります。
また伝聞も多い。
核武装論は、平和を手にするのは命がけで手にするものであり、地政学的に危うい位置にある日本は、
すぐ核を持たなければならない、と核を賛美していますが、現在進行系で同胞が核=放射能の脅威に苦しんでいる中、
このタイミングは不穏当ではないか。
核不拡散条約という欺瞞を暴いている点は納得できるが、それを解決する手段が核武装というあたり、
北朝鮮や軍事独裁国家の首長と発想がなんら変わらないといえます。
中川昭一議員に慌ててすっ飛んできた米国の話を挿話しているが、「NOと言える」石原氏なら
橋本首相の米国債を売る発言ですっ飛んできた米国を引き合いに、
米国債を売ってほしくないアメリカ、またそれを多量持っている中国に対して
強硬に核武装解除を求め、核武装解除のイニシアチブを日本が持つべきだ、くらいのことは言ってほしかったです。
もしそんなことができたら、欺瞞に対して偽善で押し切り、それこそ世界に「平和の毒」を思い知らせてやることができるのに。

原発に対しても不見識で、フランスを例に「管理の問題」だ、としていますが、今回の事故は地震津波が主因であり、
管理の問題ではなかったことは周知のとおりですし、
世界の陸地の1パーセントにも満たない日本で、全地震の一割以上が起きているという
現実も考慮していない点はあまりにもお粗末です。

教育論も現代社会論も、多くが大ニュースをソースの犯罪事件から世相を読み解いており、
針小棒大であり、著者自身が犯罪事件が減少していると認めており、マスコミやテレビが劣化している
と考えているのだから、年金問題、池田小の問題、新潟の監禁問題などを現代社会のシンボルととらえるのは
自身が劣化したマスコミに毒されているか、マスコミを利用して自説を正当化しようとしているともとられかねません。
ゆがんだ殺人事件は世界に目を向ければきりがなく、マスコミ文化の発達とともに事件報道はセンセーショナルに
時の話題をさらい、有名なイギリスの切り裂きジャック事件以降、産業社会の矛盾と好奇の報道から各所で散見でき、
アメリカ、欧州ではよほど血なまぐさい事件をみることができるし、最近の韓国は日本どころではない。
戦前日本で起きた津山三十人殺しをはじめ、戦前も昭和恐慌のおり娘を売春させた時代もあり、
著者の言う事件の"現代性"は時に的を外します。
自殺を問題視していますが、自殺の動機について、
"死ぬほど"恋をしたり、"死ぬほど"悩んだりしたことがない人が自殺するというが、まるで理解できない。
死ぬほど恋をして悩んで自死した文学者だって山と知っているでしょうにそこに思いが至らない想像力は、陳腐にして鋭さに欠けます。
この本に徹頭徹尾通底するこうした論調は、現代を憂うという、一種の老人病から来ているのではなかろうか。
その反復系を私は散々見てきた。

「近ごろの若者は・・・」というこの老人病は、遠くはエジプトのピラミッドにも記されていると言われているが、
別にそんな昔でなくとも、どの時代どの地域にも共通する考え方で、
イギリスのアガサクリスティの小説『クリスマスプディングの冒険』においても出てくるし、
クリント・イーストウッドの映画『グラン・トリノ』においても見られる。
映画『ノーカントリー』においては、この「近ごろ病」へのあからさまな異議申し立てがあります。
五一五事件の将校だった三上卓の『昭和維新の歌』をこの本でよく引き合いに出すが、
同じ五一五事件で言われたのも「近ごろの若者は教育勅語が書けない」という危機感でした。
ですから、石原氏には本家坂口安吾の『堕落論』を再読していただいて、
近ごろの人間が堕ちているのではなく、堕ちることはすなわち人間の本性であり、
理想を安易に見出してしまうのは人間の弱さであるので、
堕ちきれ、というメッセージをしかと受け止めてほしい。

そして、この現代社会の病理について著者が感じるのであったら、ただ月並みに憂うのではなく、
核武装や消費税増税という、江戸時代や中国の歴史にみる知恵の枯渇した為政者、
または金正日のような独裁者なら誰でも言いだせるようなうんざりする処方箋を出すのでもなく、
映画『グラン・トリノ』で見せたイーストウッド扮する老人が、"堕落"した近ごろの若者が引き起こす蛮行の数々に対して、
究極の自己犠牲で赦す老人を描くことでみせたメッセージのように、単なる陳腐な憂いを越した表現としてそれを昇華させてこそ
作家冥利に尽きるのではないでしょうか。
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震災後、すぐに石原慎太郎の「天罰」発言は新聞やテレビ、ネットのニュースでも報じられ、多くの日本人、とりわけ被災者の方々の顰蹙をかう恥ずべきものとして、一時期話題になった。一体、石原慎太郎は何故にそんな被災者の感情を逆撫でするような言葉を口走ったのかという疑問は誰にもあるだろう。もちろん過去にも過激な発言で度々世間の顰蹙をかってきた石原氏だから、「ああまたか」と特段に感想をもたない方もいるかと思うが。ただし、石原氏はあの発言が被災者の感情を逆撫でしたことに対して本の中でも詫びていて、その真意はまったく別のものであったと弁解している。そして石原氏はこの本を自分の遺書として書いたのだとまで述べているのである。なるほど、もう年も年だから、遺書として書いたというのもあながち嘘ではないのかもしれない。

この本を読むと、40年ほどまえに市ヶ谷の自衛隊駐屯基地でアジ演説をしたあと割腹自殺を遂げた三島由紀夫の憂国の情に通じるものがあることを感じた。かつて石原氏は三島由紀夫と同様、文壇の中では数少ない右派であったが、自らの尊敬する先輩であり、思想的に盟友でもあった三島の衝撃的な最後をみて相当な影響を受けたようである。おそらくその影響はこの本を出版した動機にも認められるのではないかと思う。三島由紀夫が戦後の日本人の精神的堕落を告発する檄文を残して去ったように、石原氏もこの本に日本人の精神的堕落に対する自らの憂国の情を込めたかったのではないか?ただし、なにぶんにも急いで出版したせいなのか石原氏の意図が十分に書けているとはいいがたい、いささか消化不良な作品になっている感は否めない。

しかし、この本を読んでいてフト思ったのだが、なぜ日本人は「天罰」というような概念をもちえたのか不思議である。これは決して石原氏個人の暴言といってすますわけにはいかない。日本人以外で「天罰」という概念をもっているのは、実はユダヤ人である。ユダヤ人は自らの不運な運命を常に神の裁きとして受け入れてきた(但し、キリスト後のユダヤ人は別)。一方、キリスト教国では(原始クリスチャンの時代を除き)、キリストの十字架によってすべての救済は完了しているとみなされているので、もともと「天罰」という概念はありえない。だから1755年11月1日に起こったリスボン大地震に襲われた際に、彼らはそれをどのように解釈してよいのか分からなかったのである。もうひとつ忘れてはならないのはイスラム教国である。30万人近い犠牲者をだした2004年のスマトラ大津波のとき、悲惨な目に遭ったインドネシアのイスラム教徒の人々は決して神を呪ったりしなかった。彼らは一様に「すべては神がなされたことだから仕方ない」と考えて受け入れているのである。そのように考えてみると、石原氏の発言を暴言としかみないわれわれ日本人の精神構造がはたして本当にまともなのかどうかあやしくなってくる。ヒューマニズム的な価値しか認めようとしない日本人の世界観は必ずしも世界標準ではないということは知っておいた方がよさそうに思う。
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 私は売れているという本よりも文学や哲学の古典をよく読むが、たまに話題の新書も読むことがある。数年前ベストセラーになった藤原正彦『国家の品格』は、当時はインパクトがあったし、私も共感する部分があった。勝間和代『お金は銀行に預けるな』も、投資信託の入門として読めるものだった。それぞれ星3つくらいは付けてもいいだろう。
 ところがこの本は、核保有にしろ消費税増税にしろ、それに反対しそうな読者を説得しようとする努力が見えず、書物としての役割をなしていない。しかも随所に見られるご都合主義な知識もかなり眉唾物である。例えば、

「大脳生理学的にいえば異民族の混血は優れた人材を多く生むそうですが、徳川二百年の鎖国は限られた国土の中での徹底した混血をもたらしました。[…]そういう意味では、日本はアメリカ合(衆)国よりはるかに早い多民族国家といえる」

 鎖国をすることで一定な期間(それも「二百年」という長い期間)外から入る異民族が制限されるというのに、それがどうして「徹底した混血」をもたらすのだろうか? しかも生まれてから歴史の浅いアメリカと比較するのでは、早いのも当たり前である。

 また最近の若者に対する認識がステレオタイプすぎる。それもそのはず、「しかし今の若い世代には、傾聴とまでいかずとも、聞いて気になるような何らの主張が一向にうかがえないし、新しい情操情念も感じられはしない」と述べるとおり、「若い世代」は著者にとって理解不能なものでしかないのである。ほんらい本を書くとか読むということは、理解不能なものでもなんとか理解しようとし、そのうえで賛成なり反対なりを表明するもののはずだ。ところがこの本の著者は、はじめから日本人は堕落したという結論が出ており、意見の対立する読者とはコミュニケーションをとるつもりがない。これこそ著者が非難する「我欲」そのものではないだろうか。私はこの本を最後まで読んだうえで反論しているが、きっと著者は私が何か言っても「何らの主張が一向にうかがえない」と言って理解しようとはしないだろう。
 それにしても若者から「何らの主張が一向にうかがえない」とは奇妙なことである。著者は日本が醜く変わり果てた現実を見ろ、現実を見ろと言う。私を含め、私の周りで若者たちははっきり「主張」しているのだ。著者・石原慎太郎のような自分がいつも正しくて、他人のことを考えない我欲が日本に蔓延してしまっているというのなら、そうした人間が都知事に再選し、その本が売れてしまうという日本の醜い現状を逃げずに見すえ、変えていかなければならないと。
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