本書は1999年に出版された『反グローバリズム』著者同,岩波書店 のただの文庫版ではない。本書では著者が一貫して主張してきた不毛な二項対立−東西冷戦型社会システム,市場か政府か,新古典派経済学かケインズ主義か−がいかに世界経済を後退させてきたか、そしてそれによって基軸通貨国アメリカが金融自由化を世界中に強制するといった金融資本主義による負のバブル循環を引き起こし、世界中の人々の「生きる権利」を「はく奪」してきたことを、詳細かつ具体的に、(1999年当時と比較して)大幅加筆しつつ説明している。もはや旧版の文庫本復古とはいえない。これは新書である。
加えて、これらの古い社会システムを超えた「第3の道」−すなわち社会保障基金政府、地方政府、中央政府による地方分権化、そしてケインズは唱えた世界通貨論のような、セーフティネットを上方に張り替えるといった非現実的な方法を逆手にとって、セーフティネットを下へ下へと張り替え、それを市場と地縁共同体の中にはめ込み、大きな政府に頼らない「真の公共空間」を作り出すという、大いなる方法論を提示している。
具体的には本書だけではこれらの構想を把握することは困難であり、神野直彦氏の著作や井出英策氏らの財政改革案も通読する必要があるだろう。
旧版『反グローバリズム』は中国でも翻訳版が出版されている。本書もまた中国のみならず、世界各国で翻訳版が出されることを期待する。
また竹森俊平氏の『資本主義は嫌いですか』にはバブル循環に対する解答が用意されていなかっただけに、竹森氏の著書の読者には本書を一読する意義があるように思われる。
最後に、本書に提示されている方法論を政府・経済政策の関係者諸兄が参考されることを強く望む。